Weekend Review~「雛の鮨」

先週、下町のフレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台にした「タルト・タタンの夢」とそのシリーズをレビューしましたが、和田はつ子の時代小説「雛の鮨」は料理人季蔵捕物控シリーズの第一作。フランスの食文化や料理の秘密は興味深く、読んでて楽しいけれど、こってりしたフレンチより和食の方がしみじみ美味しい年齢になったので、雛の鮨、七夕麝香、長次郎柿、風流雪見鍋と春夏秋冬の料理をモチーフにしたシリーズ一作目で、すっかりハマりました。日本橋にある一膳飯屋「塩梅屋」の料理人の季蔵は数年前までは武士で、許嫁もいたけれど、主家の嫡男の横恋慕に遭って、覚えのない罪を着せられて出奔。刀を包丁に替えて料理人の道を歩み始めたという設定。「タルト・タタン」がミステリーと言いつつ殺人など物騒なことは起こらず、ちょっとした謎があって、料理そのものがその謎を解くカギになっているのに対し、こちらは料理は話を彩る小道具のひとつ。代わりに人が死んだり、人さらいに遭ったりと、実際に「事件」が起きます。

「塩梅屋」には履物屋のご隠居喜平や大工の辰吉などの常連客が通って来たり、棒手振りの豪助や三吉が魚や納豆を売りに来たり。江戸の町の人たちの暮らしが垣間見えると共に、当時の町人たちにとっても庶民的な料理屋で美味しいものを食べることが楽しみだったんだなと思わせます。まぁどこまでが創作でどこまでが史料を参考にしているのかわかりませんが、同じく江戸の料理屋を描いた高田郁の「みをつくし料理帖」シリーズも同じ様な雰囲気だったから、おおよそはこんな感じだったんだろうなと思います。では、江戸時代の江戸以外の町はどうだったのか。大阪が「食いだおれ」と言われる様になったのはいつからなのかわかりませんが、浪花を舞台にした料理を扱う時代小説はあるんだろうか、あれば読んでみたいなと思ったりもします。余談ですが、桂枝雀主演のNHKドラマ「なにわの源蔵 事件帳」が大好きでした。あんな感じの浪花の料理人捕物控が読みたいなぁ。もちろん、未読ですが料理人季蔵捕物控シリーズも「悲桜餅」や「あおば鰹」といった続編は入手済。読むのが楽しみです。(モモ母)

 


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