こころ野便り~農業について思う。これから その11

民主主義と有機農業は、似ている。多様性を尊重し自由な中から生まれてくる秩序。畑の中で農薬を使わず有機物の循環の中から生まれた秩序。権力と暴力で保たれる秩序は、大きな歪を抱えてしまうことを、今私達は、目撃している。また、自由な世界にあっては、中庸を知らねばならない。春の中頃を過ぎた頃、夏野菜の種を播く。温度と湿度を保ちながら様々な自然の厳しさから苗を守ってやる。一般的な農法よりも長めに苗を育てる。有機農業の畑は、幼い苗に厳しい自然の洗礼を与えることになるからなるべく強くしておきたい。畑に植えてしまえば人の出来ることは限られる。雑草は、こまめに抜いてやるが、無数のアブラムシに樹液を吸われ生育の遅れる株も多数ある。禁じ手を嫁したことをもどかしく思いながら生育を見守る。ただ草だけは、抜いてやる。蒸し暑い日が現れ始めた頃、生育に勢いが出始めた。オクラに花が咲き始めた頃、アブラムシが減り始めた。しばらくするとアブラムシが姿を消した。熱帯夜が続く頃になるとその生命力は、何者も寄せ付けないほどの勢いになる。そして盛夏が過ぎる頃には、新たな虫が着き始める。勢いが衰えはじめたのだろう。種から育てた野菜の一生を見ながら自然から生まれる秩序を垣間見ているようだ。この畑から有り余るほど大量の野菜が収穫出来るわけではないが、家族が生活できる程度の恵みを与えてくれる。
端境期をなるべく短くしたいと言う気持ちは、欲なのだろうか、自然な秩序に狂いが生まれる。自然をどの様に観、理解し言葉にするか。物言わぬ野菜だが、ただ美味しいだけでもない。百姓もただ野菜を育てるだけの仕事でもない。

京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら


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