5月も半ばを過ぎましたが、この時節ならでの季語が揃い、皆さんの句を心楽しく読ませていただきました。
△子供の日ぼくも入れてとワンとなく 千恵
【評】面白い句ですが「ぼくも入れてと」は作者の解釈。その部分を、たとえば「上目遣いに」など客観的に描写しましょう。
〇単衣着て台子手前の友凛乎 千恵
【評】点前の場面ですね。下五を「凛と」としたほうがよいかもしれません。
△育苗の仕事初めや辛夷咲く 作好
【評】「育苗の仕事初め」は抽象的な説明にすぎません。画家になったつもりで作句してみてください。具体的にどんな動作の絵を描きますか。
△昼下がり花びら二枚山下る 作好
【評】俳句では「昼下がり」という言葉は避けたほうが無難です(句が甘くなりますので)。また、「花びら」は季語にならないと説く人もいます。「高嶺より落花相寄り飛んで来し」など、もう一工夫してみましょう。
△ひと針で日本蜜蜂群守る 美春
【評】これは俳句というより、日本蜜蜂の生態についての説明ですね。より臨場感のある蜂の描写を期待します。
△育ちたる菖蒲ひと束浮べけり 美春
【評】どこに浮かべたのか述べてください(菖蒲湯のことだとは思いますが)。「育ちたる」は観念にすぎません。なぜ「育ちたる」と思ったのですか。それが大きかったからですね。その大きく見事な姿がありありと目に浮かぶように描写するのが写生俳句です。
△~〇蜥蜴出づ門灯に浮く縞模様 妙好
【評】句意はとれますが、上五で切れているのが惜しい。「蜥蜴出で」としましょう。
〇灰汁水の翡翠色なる蕨かな 妙好
【評】灰汁が翡翠色に染まるのですね。印象鮮明な句です。
◎居酒屋の止り木のきは蚰蜒走る 音羽
【評】写生句のお手本のような作品です。情景も面白く臨場感があります。
◎スマホ繰るをみなは白寿ばら深紅 音羽
【評】「スマホ」という卑俗な言葉と「をみな」という雅な表現の対比が巧みです。また「白寿」の女性に「深紅」の薔薇の取り合わせも素敵ですね。
〇~◎葱坊主児らのふきだすにらめっこ ちづ
【評】読み手の心を和ませてくれる作品です。「にらめつこ」と表記しましょう。
◎春風や足ばたつかせ嬰笑ふ ちづ
【評】写生の行き届いた句です。幸福感にみちた情景が思い浮かびました。
△ささがきの香り新し新牛蒡 千代
【評】「ささがき」と「新牛蒡」は離さず、もっとくっ付けたほうがよいでしょう。また、「新牛蒡」ですから、「新し」というのは重複ですね。「新牛蒡ささがきにして香の強し」など。
△~〇筍の匂ひの青き刺身かな 千代
【評】「筍」と「刺身」はワンセットですから離さない方がよいでしょう。「筍の刺身に青き匂ひかな」くらいでどうでしょう。
〇声小さきミサの応唱余花の雨 花子
【評】コロナ禍のため、わざと小さな声で応唱しているのですね。それならば、上五を「声抑へ」としたほうが句意がはっきりするように思います。前書に「コロナ禍のなかで」と書いておくのも一法でしょう。
△薫風や缶酎ハイの点字読む 花子
【評】句材はユニークですが、この季語と缶酎ハイだけで十分ではないでしょうか。「点字」のことまで言うと意味を盛りすぎの感じがします。
〇振り向けば田植の後に水鏡 白き花
【評】「振り向けば」に田植えを終えた達成感が感じ取れます。ただ、「水鏡」はやや平凡かもしれません。植えたばかりの田は大体そのようなものですので。
〇母の日は居間に一輪母子草 白き花
【評】「母の日」と「母子草」の取り合わせに面白みを感じました。季重なりですが、それは意図してのことですので結構でしょう。
◎雪渓の先へ消えゆく足趾かな 徒歩
【評】神秘的な景ですね。この足跡の主は誰なのでしょう。そして、それを追う作者は何者なのか、、、などと考えるとサスペンスドラマのようです。
〇電線が泰山木の花の中 徒歩
【評】軽いタッチの句ですが、こういうところを見逃さないのが俳人の眼です。俳句の面白みもこのような場面から生まれるのでしょう。
〇~◎実梅もぐ赤き電車の見ゆる畑 多喜
【評】きっちりとできた写生句です。どこか油絵のタッチを思わせる作品ですね。
〇串カツに添ふるざく切り春キヤベツ 多喜
【評】写生句としては合格です。ただ、まだ日常感覚にとどまっていて、詩には高められていないかなと思いました。
〇~◎田の起伏均す農夫に花の雨 ひろ
【評】これがただの雨であれば平凡な景となってしまいますが、「花の雨」でぐんと趣が増しました。この季語からは農夫へのいたわりの心も伝わってきます。
△~〇玄関に土鈴の小さき武者飾 ひろ
【評】「土鈴の武者飾」が今一つわかりませんが、土鈴に何かの絵が描かれているのでしょうか。わたしの理解不足かもしれません、、、。
〇~◎教会のミサの応唱薔薇の雨 ゆき
【評】ミサと薔薇の雨がうまくマッチしています。美しい句です。
△~〇開け窓に聖歌漏れ来て矢車草 ゆき
【評】「開け窓に」がやや説明的ですね(窓を開けてあるから声が漏れてくるのだと説明しているわけですので)。また、「漏れ来て」も連用形で切れが曖昧ですので、何とか中七できちっと切れを入れたいものです。推敲してみてください。
〇豆腐屋の涼しく豆腐掬ひをり あみか
【評】豆腐屋が豆腐を掬うのは当たり前ですが、「涼しく」で詩になりました。「豆腐屋の涼しく掬ふ絹豆腐」などとしてみるのも一法でしょうか。
〇十割そばはらりと切れて緑雨かな あみか
【評】なかなか面白い句です。「十割蕎麦はらりと切れし緑雨なか」など、もうすこし練ってみてもいいかもしれませんね。
◎新緑や老いも若きも空仰ぐ 永河
【評】すなおに詠まれた句で大変結構です。いかにも新緑の季節らしい気持ちよさが伝わってきました。下五、「空仰ぎ」でもいいかもしれません。
◎藤波や万葉の歌読み継がれ 永河
【評】技巧的にもすぐれた句です。「読み継がれ」に時の流れを感じますが、その流れが「波」ときれいに呼応しています。
〇古民家の軒に唐箕や青胡桃 織美
【評】できれば「軒下に」と正確に言いたいところですが、情景はしっかりと見えてきました。「青胡桃」という具体的な季語も結構です。
〇~◎母の日の母遺影より出て来そう 織美
【評】温かみがあって、しかもどこかユーモラスです。歴史的な仮名遣いでは「来さう」となります。
◎平伏して御足参りや竹の秋 智代
【評】ネットで鎌倉・長谷寺の御足参りのことを知りました。「平伏して」と具体的に述べたところが結構です。季語も風情がありますね。
〇走り梅雨五重の塔も暈しをり 智代
【評】雨に五重塔がけぶっているのですね。五重塔「も」ではなく、「を」と断定したほうが力強い句になります。なお、五重塔と書いて「ごじゅうのとう」と読みますので、「の」は略して結構です。
〇雪残る濁河の湯の滾りたる 久美
【評】「濁河」と書いて「にごりご」と読むのですね。おおむね結構ですが、切れを入れると一句に張りが出ます。「滾りたる濁河の湯や雪残る」など。
◎初夏の下呂の露天湯朝日さす 久美
【評】大変結構です。早朝、こんな露天湯に浸かってみたいものです。
△日脚のぶ烏賊を当てにし冷酒酌む 慶喜
【評】「日脚伸ぶ」は冬の季語、「冷酒」は夏の季語です。どちらかの季語にしぼって再考してください。
△五月雨筍貰い浅利汁 慶喜
【評】「五月雨」と「筍」は夏の季語、「浅利汁」は春の季語です。まずは季語を一つにしぼるところからスタートしてください。
次回は6月7日(火)の掲載となります。前日の午後6時までにご投句いただければ幸いです。河原地英武
「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。