自然の摂理に従った農業とは、自然の法・自然の真理の探究である。無為自然の力に翻弄され、科学的な視点からは、原始的、情緒的と揶揄される。経済的には、非効率、非生産的と改善を求められスマート農業なるものに転換を求められる。しかし、どんなにスマートに生きようとも本来生きるということは、何れ避けようのない死を前提とした矛盾に満ちた苦しいもの。4人の子供達が、義務教育を順々に終えはじめた頃、青臭い夢をかなえるために自分に禁じ手を嫁し農業で勝負することのもどかしさと辛さに音をあげ掛けていた。そんな時松山千春の歌う「大空と大地の中で」がラジオから流れてきた。それまで松山千春なんて聞いたことが無かったのにその力強い歌声と歌詞が心身に浸みてきた。「～振り返るにはまだ若い」。またある時、「虹よ　百姓の凱旋門よ」というジュール・ルナールの短い詩が木津川計さんの流れるような語りで紹介された。「何のことの無い身近な自然に感動を覚えるのは、自分の事を応援してくれているからに違いない」そう思えた。振り返るにはまだ若いと思いながら様々なものに応援されながら歩みを進めてきた。昨年、買い支えて頂いているお客様の質問に答える形で振り返ってみることにした。もう若くないということかもしれないが、とても楽しかった。そして、図らずも次世代にバトンを渡すタイミングであった。見様見真似であれ技術は伝えることが出来る。しかし、そこに魂が宿らなければ其のうち楽な方へと流されるだろう。自分だけで終わらない為に本当のチャレンジは、これからだ。

京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら。