「メンタリスト」という肩書で(おそらく自称)、テレビやネットなどで活動しているDaiGo氏がYouTubeで「生活保護受給者やホームレスの方を殺してもよい(なぜなら自分にとっても社会にとっても役に立たないから)」という趣旨の発言を行い、批判をうけて「謝罪」するということがありました。「あの、その方たちも、あなたが暮らすこの社会のメンバーなんですけど(←私の心の声)」
経緯はこちらの、生活困窮者支援団体が共同で出した声明から辿ることができます。
【拡散希望】メンタリストDaiGo氏のYouTubeにおけるヘイト発言を受けた緊急声明https://t.co/2e9sCHpKgX
生活困窮者支援団体の連名で声明を発表しました。昨夜の「謝罪・反省」動画の問題点も書いています。ぜひご一読ください。
— 稲葉剛 (@inabatsuyoshi) August 14, 2021
上で「謝罪」とカッコ書きで書きましたが、何が悪かったのかを理解していないという指摘も少なからずあります。特に、「生活保護受給者やホームレスの方の中にも、頑張って努力している人もいるのに(悪いことを言った)」という「反省」を述べていることについて、相変わらず努力の程度や方向でもって、人権や命を守られる人とそうでない人を分けても構わないのだと思っていることが見て取れるためです。
さてDaiGo氏の発信の後、厚労省はこのようなtweetをしました。以前にあった生活保護バッシングの際にはなかったことで、厚労省の意識も変わりつつあるのかもしれません。
今、ぜひ拡散してほしいツイートです。 https://t.co/n1ata5P3JE
— 稲葉剛 (@inabatsuyoshi) August 13, 2021
生活保護についてありがちな誤解を解くための発信もあります。
生活保護につながることは死から遠ざかること、自立を押し付けないことが自立に繋がる、という、今、とても大切な指摘。
みんな幸せになっていい、無差別平等の原理、日本国憲法と生活保護の基本のキ #DaiGo氏差別発言(末冨芳)#Yahooニュースhttps://t.co/3n4p7PhGiS
— 小久保 哲郎 (@tetsurokokubo) August 13, 2021
ドキュメンタリー映像作家の飯田基晴さんはなんと、ご自身の映画を8月31日まで無料公開されました!
【映画/シェア】ドキュメンタリー映像作家の飯田基晴さん @iidamotoharu が監督作品『あしがらさん』を2021年8月31日まで無料公開します。これは「メンタリストDaiGo」氏によるホームレス状態の人・生活保護利用当事者への差別発言に対する飯田監督の反論だそうです。https://t.co/NfdFbsMauF
— 中村 順 (NAKAMURA Jun) (@kihachin) August 13, 2021
一方、DaiGo氏がどうしてあのような考え方になってしまったのか、同じように考える人を増やさないため、また彼自身がいまだに持っている誤解を解くためにどうしようかという発信もいくつかあります。
子どもの頃に誰もが生活保護を申請する、実践型の授業を受けられたらいいんだよね。こういうときに受けられる、こうやって受けられる。そういうことを実際にやりながら教えてほしい。権利として当たり前のものだという意識を持たせる。すごく大事だと思う。
— 和田靜香#石ころ (@wadashizuka) August 13, 2021
DaiGo さんにもしこの授業を受ける機会があったなら。|武田 信子 | Nobuko Takeda @medicinebeaver #note https://t.co/WmFyVUMdFA
— GOTO, Takeo (@OKETA) August 13, 2021
抱撲(ほうぼく)さんの一連のtweetは、うならされますね。特に「あなたにとってもそんな社会であれと思う」という一節。「あなた」にはDaiGoさんも、彼が今回傷つけた多くの人たちも含まれるのかなと思いました(全体が表示できないので、次のtweetの右上のハトのマークをクリックしてください)
間違っても、やり直せる。アップデート出来る。「ああ、間違ってたな」「間違ってたね」と進んでいける。あなたにとってもそんな社会であれと思う。
— NPO法人 抱樸(ほうぼく) (@npohouboku) August 12, 2021
さて個人的に、このDaiGoという人物に対しては昔から批判的でした。心理学の知識のごく一部を使って、「他人の心を読んだり操作したりできる、その方法を自分は知っている、教えてやろう」という態度が、「違うやろ」と思うからです。自分の心も、ましてや他人の心も、思うように動かしたり読み取ったりなんて、できはしないものですから。けれども実際には、彼に影響されて大学に入ってくる学生もいるのです。心理学を研究する方の、こんなtweetも見かけました。
いろいろ反応見てると、やはり心理学側はきちんと状況を把握し整理した方がいい気がしてきます。これまでメンタリストイメージで心理系に入ってきた学生については現場で個別対応だったと思いますが、様々な誤解を正すときなのかもしれません。
— もむ (@momentumyy) August 13, 2021
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。