大学で非常勤講師をしている。
先日、授業の中で障害児の利用できる福祉制度について話をした。
障害のある子どもが小学校1年生になるとして、どんな社会資源をつかえるかというような話だった。
正直なところ、日本の障害福祉制度はまだまだ不備が多い。小学校1年生になる障害のある子どもが使える制度としては、「児童クラブ」「放課後等デイサービス」「日中一時支援」「ホームヘルプサービス」等がある。これらの制度は住んでいる市町村によって少しづつ違う。
私は自分が住んでいる滋賀県大津市について説明をした。大津市では、親が就労している等の一定の条件を満たせば、障害があってもなくても児童クラブを利用できる。家族の就労保障という意味では一番使いやすい制度となる。しかし、どの児童クラブもかなりの数の子どもが利用していて、雨の日などがぎゅうぎゅう詰めの状態。聴覚過敏などうるさい場所が苦手なこどもにはかなり過酷な環境になる。また、重症心身障害等でおむつの交換が必要な子どもであれば、おむつ交換の場所なども確保できないことが多い。
では、放課後等デイサービスはどうかというと、この制度は「障害のある子どもの発達援助が目的であり、親の就労を理由には使えない」となっている。そのため、発達援助として療育の必要量によって使える日数が決まる。大津市では標準利用は月15日が上限だ。そうなると、だいたい週3日の利用になる。
もうひとつ、市町村の事業で「日中一時支援」というものがあり、こちらは「介護者の用事がある時に、預けられる制度」なので、親の就労を理由に使うことができる。しかし、事業所の数が非常に少ないのでなかなか見つけられない。
そういう話を学生にして、「この状況では、両親共働きフルタイムを継続するのは非常に難しくなる」という、社会制度の不備の側面と、もうひとつ、「なんとか、いくつかのサービスを組み合わせて毎日の放課後をサービスで埋めるとしても、月曜日はA事業所、火曜日はB事業所、水曜日はC事業所…、となると、小学校1年生にはかなり大きなストレスになるし、親御さんも複数個所との契約や連絡帳の記入などとても大変だ。」というような話をした。
そのことについて、学生からいくつかの感想が寄せられた。大きく分けると2つの傾向があった。
①フルタイム就労が難しくなることに対して問題があるという意見と、とはいえたくさんのところに預けられる子どものストレスも心配だというもの。
②親の都合で、子どもにストレスをかけるのはよくない。子どもを第1に考えるべきだというもの。
私はこの意見2つは、どちらもあるだろうと思うし、だからこそ、家族でよく話し合ってどうするか決めることが大切だと伝えていた。
ひとつ気になったのは、①の意見は女性の学生から多く出され、②の意見は男性の学生から多く出されたことだ。
これは推測だが、女性の学生は「こうなったら、私が仕事をやめなければならないのか…」ということを想定していて、男性の学生は「自分が仕事をやめることを想定していない」のではないか。
学生の感想文を読みながら、そんなことをもやもやと考えた。