自衛隊での生活は、二任期目に入っていた。後輩も出来て気の合う友人も増えた。市役所に有る柔道部にも入れてもらい、外部の友人も出来て試合にも出させてもらった。貯めていたお金でピックアップトラックを買った。北海道には、行ってみたい所がいっぱい有る。もう一任期の二年間北海道を満喫しようと思っていた。いやもっと長く居たいな等と思い始めた頃、「話があるから一度帰って来い」と言う父からの連絡。お盆の休暇を利用し帰った。近郊の農地は、大規模な区画整理の計画があり、完成すれば畑は減ってゆくだろうし、野菜を育てるのに適さない環境になるだろう。お前が農業をするのなら畑を農業専用地域に移すから早いうちに決めなさいということだった。畑では、すでに測量が始まり予定区画を示す杭が打たれていた。北海道の生活には、未練はあるが決める時だろうなと思った。そして考えていた自分なりのやってみたい農法を父に話した。「俺は、農薬を使わない農業がしたい」目を輝かせて言ったつもりだ。以前退屈そうに農業をしていた私が、「自らやる気を出してくれたか」と父は、褒めてくれるものとばかり思っていた。
しかし、「アホな事を言うな!」「農薬を使わずに野菜が育つ訳がないやろ!」と怒鳴られた。
京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら。