前回のインタビューの続きです。
彩 おもやや瑞穂に行って感じたことは?
坂本健氏
障害者施設と言われるところに初めて行った。
瑞穂で見学させてもらって、すごいみんな真面目に取り組んでいるな、と。
版画の仕事をしていた人とか、仕事に誇りをもってやっているのをすごく感じた。
この仕事は自分がやる、みたいな。それは、社会的に評価されるべきことであってほしいと感じた。”障害者施設で作ったカレンダー”で終わってはいけないなというか、ものづくりとして対価が生まれるべきものだと思った。
おもやさんでもそう。みんな「これが自分たちの仕事だ!」みたいな空気感。その感じがすごくよかった。
やらされててどうこうという空気がなかった。
いっしょにこうやって取り組んで、出来上がっていったのもがお客さんに届いていってっていう流れの一つを任せたいなあと思える場所だった。
僕らがそれを発信できる場所として、商品を販売して、お客さんが手に取った時に、あの人たちが働いている姿がお客さんの目に見える場所に届くんだと考えると、僕らが販売する大きな意味がある。今は個々がメディアになれる時代だから、どこかにゆだねてしまおうとしないで責任をもって発信することはすごく重要。そのメディアとしての力がいまcenciにあるからこそ、発信することに意味がある。
彩 手が届く範囲、目が届く範囲、気持ちが配れる範囲はそんなに広くない。
坂本健氏
今の世の中ってお金が一番の価値になってしまっていて、お金を貯めることを1番の目標にしてしまうと、そういう束ね方をして、その中にお金の供給量の差をつけて末端の人から搾取したものが頂点の人のところに行くという方法しかない。
仕事の対価って、「ぼくはおいしいものを作ります。その対価としてお金をもらいます。」というのがあって、例えば年収1億とかなろうとしたら、店をどんどん増やすとかしていくしかない。
そこに自分の思いなんか入るわけがない状態をどんどん作っていって、そこで働いている人たちの賃金を安くして、自分のお金をため込んでいくことになる。
それより、自分が責任もって見れる範囲で、きちんと働く人にも分配できたらいいと思う。
自分たちが責任をもってこの店をやり続けている価値っていうのを理解してくれる人に来てもらって、意味のある仕事をしていきたい。
彩
それぞれが自分が誇りをもってできる仕事をして役割を果たしていって、その小さなコミュニティがたくさんあるといい。巨大なコミュニティを作るのではなく。思いのわかる範囲、手の届く範囲でお互いが自分の仕事に誇りを持てる環境を作り続けていく。
坂本健氏
お金は社会を回していくための手段であって、目的ではない。そのことを堂々と言えなくなっている。きれいごとを言っているようにとらえられたり。「ほんとは、お金が欲しいんでしょう。」というようにお金が目的であることが正直なんだという価値観が蔓延していて、仕事の中身に価値を見出していることが嘘のようにとらえられる。
短期的な費用対効果だけで物事を考えるんじゃなくて、例えば海外のイベントなどに店を閉めていくことは、その期間だけで考えたら店を開けたほうがお金は入ってくる。でも、そうやってしまうと将来につながっていかない。店のスタッフも楽しそうにしてくれて海外で新しい経験を積んで、学んで、仕事にいい影響がある。
彩
これは、それぞれが自分の仕事に誇りをもって働き続けることを持続させていくための取り組み。
長々と書きましたが、「柚子唐辛子ができるまで」は今回で終わります。ありがとうございました。
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