障害のある子どもとお金のこと(7)

前回の続きです。

さて、架空の山田花子さんのご両親が社会福祉士の鈴木さんと複数で成年後見人をしようとしているお話を前回書きました。

前回の話の中ででてきた「後見人に支払うお金」(=後見報酬)について、今回は書きたいと思います。

「報酬が高いのでもったいない」

という声はよく聞きます。大切なお金ですからもっともなことだと思います。

後見人に支払う報酬はだいたい月2万円程度が目安ですが、預貯金や不動産などをたくさん持っておられる方の場合は、財産管理もそれだけ複雑にもなりますので、裁判所の判断でもう少し高くなる場合があります。逆に、預貯金が少ないなど、支払い能力がない方には補助する制度があります。

報酬額の目安は裁判所のサイトで確認できます。

報酬額の目安 裁判所サイト→こちらをクリック

 

資産がなく、助成金の交付を受けなければ成年後見制度の利用が困難な状況にある場合には、各市町村に「成年後見人等報酬助成金」の制度があります。市町村によって利用できる対象が違いますので、詳しくはお住まいの市町にご確認ください。

参考までに滋賀県大津市と、彦根市の要綱は以下の通りです。

大津市成年後見人等報酬助成金交付要綱

彦根市成年後見人等報酬助成金交付要綱

山田花子さんは、300万円程度の預貯金でしたので、成年後見人の報酬は2万円になるだろうと予想されました。しかし、当初は、花子さんのお母さんと社会福祉士の鈴木さんが二人で複数後見を受任しますので、折半して1万円づつとすることにしました。

コラム「障害のある子どもとお金のこと(4)」で紹介したように、山田花子さんは、障害基礎年金でギリギリ何とか生活ができています。毎月2万円を後見にさんに支払うと赤字になってしまいます。そのぶんは、預貯金から支払うことになります。

山田花子さんは、40歳です。仮に80歳まで花子さんが生きられるとして計算すると、

2万円×12か月×40年=960万円

になります。こう考えるとやはり大きな金額ですね。

しかし、この金額を残しておかなければならないと考える必要はありません。様々な制度を活用することができます。

花子さんのお母さんが長生きされる場合、後見人に支払う報酬は1万円になります。お母さんは、花子さんから後見報酬を受け取らないので、花子さんが60歳になるまでお母さんが長生きしておられたら、

1万円×12か月×20年=240万円

960万円―240万円=720万円

になります。(金額はめやすです)

そして、先ほどお話したように、市町村には「成年後見人等報酬助成」の制度があります。預貯金の残高がどの程度になれば申請ができるのかは市町村によって違いますが、少なくなれば、この制度を利用して後見報酬を支払うこともできます。

コラム「障害のある子どもとお金のこと(4)」で紹介したように、花子さんの生活費には、「カラオケに行く」などの楽しみも含まれていますので、後見報酬を支払うためにカラオケをあきらめる、というようなことにはなりません。グループホームで住まいと食事が保障され、衣類を購入するお金や携帯利用料も計算に入れてある生活費なので、それを削る必要はありません。

これは、私のお金に対する考え方ですが、「元気で体力があるうちにいろんな楽しみを経験する暮らし」をしてほしいと思っています。なので、後見人への報酬を残すためにいろんなことを我慢するのではなく、元気なうちに、友だちとのカラオケや旅行など人生をエンジョイしてもらいたいと思います。

花子さんの預貯金300万円も、親御さんが花子さんのために残したお金です。後見報酬にすべてを使わなければならないのではなく、花子さんが自分の人生を楽しむために使ってほしいと思います。

そして、預貯金が少なくなったら、「成年後見人等報酬助成」の制度がありますし、もっと少なくなったら生活保護を受給することもできますので、花子さんが「住む場所がない、食べるものがない、着るものがない」などということには絶対になりません。そもそも、現在の制度では、障害基礎年金で毎月受給できる額より、生活保護の最低生活費の方が多いので、生活保護を受給したほうが月々の生活に使えるお金は増えることになります。障害基礎年金に加えて、生活保護費を毎月3~4万円程度受給できるケースが多いです。無駄遣いをしてまで生活保護を受ける必要はないですが、ことさらに生活を締め付けてまでして後見人に報酬を支払う必要はないと思います。


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About 坂本彩 22 Articles
坂本彩(彩社会福祉士事務所) 大学卒業後、20年間、知的障害のある人とかかわる仕事をする。2017年に、独立型社会福祉士事務所を開業。福祉施設のアドバイザーや研修講師、成年後見人の受任、大学の非常勤講師などをしている。障害のある人もない人も一緒に「学び合いの空間づくり」をしていきたい。社会福祉士、介護福祉士、障害者相談支援専門員、そのほか、漢方養生士指導士、漢方スタイリスト、薬膳アドバイザーの資格も持つ。