俳句誌「伊吹嶺」主宰で当サイトでも「カナリア俳壇」を連載している河原地英武さんの句集「憂国」が出版されました。「伊吹嶺」副主宰としての5年間と主宰1年目に発表した俳句の中から300句を自選したもので、「憂国」の句集名については「時局的な問題に関心をもち、この国の将来に危機感を募らせている。それがときどき作品にも表れているようだ。三島文学の愛読者ではないけれども、わたしのそんな思いを表題に込めた次第である」とあとがきに書かれています。
但し、その思いを含みながらも作風は決して政治色の強いものではなく、日常の一コマを鮮やかに切り取り、時にはユーモアを感じさせて、門外漢でも楽しめました。
「わが睫毛冬の日差を虹いろに」
「古書店に主とふたりクリスマス」
「夜濯の紺のワイシャツぱんと張る」
「夜学子の一音鳴らすピアノかな」
光景が目に浮かんできたり、音が聞こえてきそうだったり。読む者の感覚を刺激されます。
「答案の点少し足すクリスマス」
「短日の教員室でパン齧る」
教育者らしい句も目立ちます。
「天井の蜘蛛落とさんと定規取る」
「原稿の締切延ばし玉子酒」
作者の様子を思い浮かべると口元が緩んでしまいます。シンプルな表紙と帯のコントラストがスタイリッシュな和兎さんの装丁も印象的です。(モモ母)
ご注文はふらんす堂まで。