10月から消費税が10%に増税されるとともに、「キャッシュレス決済を利用するとポイント還元をするから増税分の負担感が減る」と国をあげてキャッシュレスをすすめている。
私は、知的障害のある人とかかわる仕事をしているので、この、「キャッシュレス決済=見えないお金」によってさまざまなトラブルになるのではないかと危惧していた。
そこで、今年度当初から知的障害や精神障害のある人向けのキャッシュレス決済勉強会の企画を進めてきた。大津市障害者自立支援協議会の中に設置されている「じぶん銀行じぶん支店プロジェクト」(通称JJP)の取り組みとして、メンバーでどのような方法が伝わりやすいか、参加しやすいかなどの検討を重ねて、消費税10%増税にあわせて勉強会を開催する。
準備の過程で、すでにスマホ決済で使いすぎて給料以上の請求が翌月に来てびっくりしている人の話なども聞こえてきたり、支援者と言われる私たち自身も今一つ仕組みがわかっていないことも見えてきた。そこで、まず、支援者自身がしばらくいくつかのキャッシュレス決済を使って1~2か月を過ごしてみた。その結果、「確かに便利だ」「でも、クレジットカードを紐づけをしていると、使いすぎてしまう。」「登録の時に、いろいろ同意するというボタンを押さねばならず、なにに同意しているのか、字も細かいしよくわからないしなんだか怖い。」というような話がでてきた。
次に、消費生活センターの方を講師に招いて自分たちがまず勉強をした。詳しい内容はさておき、結論として、私は、「近所のスーパーで使えるチャージ式のHOPマネーと、チャージ式のICOCAだけにしておこう。」と思った。スマホ決済については、確かに便利だけれど、停電になったら使えないということ。ちょうど台風で停電の大きな被害が出た時期でもあり、「スマホだけを頼りにするのは怖い。」と感じた。また、やはり、スマホ決済では様々な情報がとられるということ。「40代で関西に在住する女性」という属性の私が何をどんなふうに購入しているかという情報がこれからどんなふうに利用されるのだろうと考えるとなんだか嫌な気持ちになった。
そして、いよいよ、知的障害等のある人にわかりやすい勉強会の内容をどうしたらいいかという企画に入った。文字だけの情報では、わかりにくいし伝わりにくい。動画や劇などストーリーのあるもので理解したほうがいいだろう、という話になった。幸い、消費生活センターには、様々な教材DVDや寸劇の台本があった。寸劇の台本の中には「特別支援学校向け」などのわかりやすいものもあり、その中からいくつかの台本を選んだり、自分たちでも台本を考えて3本の寸劇をすることになった。
①PCゲーム課金で親のクレジットカードで20万円使ってしまう。
②SNSで知り合いデート商法で30万円の絵画を購入する契約をしてしまう。
③キャッシュレス決済でポイントがお得と聞き、アプリをダウンロードして買い物をしてせっかく貯めた貯金を使い果たしてしまう。
の3本である。どれも「あるある~」というような内容である。
当日は、30名近くの参加者があった。5分程度の寸劇を1本するごとに「どうすればよかったかグループで考えてください。」と話し合ってもらった。参加者は積極的に手を挙げて「クレジットカードを使わない」「有料アイテムが出てきたらゲームをやめる」「ネットで知り合った人には会わない」「断ることが大切」「まず、誰かに相談する」などの意見を出してくれた。感想文でも「クーリングオフについて詳しく知りたい」などの意見もあった。
知的障害のある人にとって、キャッシュレス決済の仕組みを正確に理解することはむつかしい。9歳~10歳くらいの認識の力がなければ「見えないお金」を理解するのはむつかしいと言われている。それでも「使う前に誰かに相談しよう。」とまず思ってくれることが大切だとスタッフで考えていた。
今回は、通所施設などの通っている障害のある人が中心に参加してくれた。次は、一般就労している人、福祉関係とのつながりが薄い人などのところにも情報を届けて、堅苦しい勉強会ではなく、夜におしゃべりしながら参加できるような場を開催する予定になっている。