なかなか挑発的なタイトルですね。
もちろん日本が民主主義国家でないと言いたいのではありません。ただし制度的に民主主義が保証されているからといって安心してはなりません。わたしたちは定期的に健康診断を受けます。そのとき、健康な人でも「自分は本当に健康だろうか」と疑ってみます。それと同じで、国家も定期的に民主主義度を振り返ることが必須です。国政選挙はそのよい機会です。
今回の参院選の投票率は48.80%で、過去2番目に低い数字だったとか。
投票率が高ければよいというものではないのですが(現に独裁国家はしばしば投票率が90%を越えたと誇示しますが、それは大衆が選挙に動員されるせいです)、50%割れは由々しい事態です。
今日(7月23日)の『京都新聞』も第4面に「民主主義の危機」という見出しを付けていました。
はい。「識者は『政治不信の表れで民主主義にとって危機的だ』と警鐘を鳴らす」という文面でした。わたしも危機的だと感じています。しかしこれは「政治不信の表れ」なのか。大学教師として日々学生と向き合っている立場からすると、逆の印象を受けるのです。わたしが知る限り、学生たちの多くは就職事情が好転している昨今の情勢を肯定し、現状の維持を強く望んでいます。大部分の学生は新聞を読みませんし、テレビニュースも見ません。政治的な話題に関しては唖然とするほどうといのです。総務省の統計によれば、若い世代ほど選挙に行かないことは歴然としていますが、今回はさらに世代間格差が広がったのではないでしょうか。選挙年齢を18歳に下げた意味がありません。
教育の問題でしょうか?
学校教育のなかで政治問題を取り上げるのは難しいと思います。課外活動の一つとして、あるいは社会のなかで、世代を越えた議論の場が生まれたら面白いと思います。それと、特に若い人には国際的な視野をもってもらいたい。たとえば日韓の学生が、それぞれ一週間ずつでも相手国にホームステイする機会が増えれば、今日のような険悪な日韓関係が緩和されるのではないかと思います。
たしかに海外の日本に向ける眼差しは、民主主義に関しても冷やかなものがありますね。「国境なき記者団」が毎年4月に発表する「報道の自由度ランキング」でも日本の順位が低くて驚きました。今年は180ヵ国中67位だそうです。
最近、日本の言論の自由をめぐって、欧米の識者が厳しい見方をしています。アメリカの新聞『ニューヨークタイムズ』(電子版)が7月5日、日本政府を独裁政権と関連付けて報道したこともご存じでしょう。
こうした欧米からの批判には偏向があるとの意見も聞きますが。
たしかに価値観の違いはあるでしょう。しかし第一に、このような批判が出ている現実をきちんと受け止める姿勢は重要です。第二に、公的な場で批判を受けた以上、批判された当事者は公的に反論するなり改善策を示すなりしないといけないでしょうね。もう一つ、日本で働く外国人労働者たちの声も気がかりです。次の報道ニュースをご覧ください。
彼ら外国人労働者が「技能実習生」の名の下に、不当な労働を強いられている現実が垣間見えます。彼らの人権を擁護してこその民主主義国家でしょう。このような雇用の実態を放置すると、将来、第二、第三の「徴用工問題」が起こらないとも限りません。
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