カナリアに聞く~戸田真紀子さん

――死んだ540万人とは戦争で亡くなったのですか、それとも虐殺、餓死でしょうか?
犠牲者の多くは民間人で戦争関連で死んでいます。ナイジェリアのビアフラ戦争での死者は200万人ですが、餓死者が150万人と言われています。政府軍に包囲されて兵糧攻めにあったのです。ほとんどのケースで、アフリカの紛争の死者数は、ヨーロッパやアジア、アメリカスの紛争の死者数とケタが違います。奴隷貿易に始まり現在まで、アフリカ人の命が一番軽んじられていると私は思います。

ルワンダ

ルワンダで1994年に起きたジェノサイド(大量虐殺)では3ヶ月間で約80万人が殺されました。トータルでは100万人が命を奪われました。でも実はジェノサイドは防げたのです。事前に密告者が、ジェノサイドの準備をしていることを国連ルワンダ支援団(国連PKO)に伝えていました。それは国連事務局も把握しています。しかしアメリカやフランスなどからの圧力で、対応する権限を求めた国連ルワンダ支援団の司令官は、事務局から何もするなという返事を受け取りました。80万人の人びとは見捨てられたのです。ジェノサイドが終結した後、ジェノサイドに加担した人びとが旧政府軍・民兵組織と共に周辺国に逃げ出していきます。そして難民キャンプができます。日本の自衛隊もPKOで派遣されましたが、難民キャンプの維持には莫大なお金が掛かります。事前の密告を受けた段階で武器を回収し、ジェノサイドをやめさせていたら、もしくはジェノサイドの初期に大規模介入を国連が行っていたら、もっと少ない金額で抑えられ、かつ大量に死者も出さなくて済んだと、専門家は指摘しています。100万人の命が奪われた上に、難民キャンプを維持する莫大な費用を先進国の国民の税金で賄っていたわけです。納税者である私たちはなぜ?と疑問を持たなければいけないのに、「人道支援」という幕で覆われて事実が見えず、騙されていることも気づきません。アフリカの人びとも、そこで活動するNGO関係者も、日本の軍隊にアフリカに来てほしいとは思っていません。日本に期待されている援助は、インフラ整備や教育や医療の分野です。アフリカに関心を持てば、私たちが納めた税金がどのように使われているのか、誰が得をしているのか、そういったことが分かってきます。アフリカを通して国際政治を見ると、アフリカの出来事と私たちの生活が実は深く関わっているということも見えてきます。

■戸田真紀子(とだ・まきこ)
1963年生まれ。天理大学国際文化学部教授を経て、2009年より京都女子大学現代社会学部教授。博士(法学)。専門は比較政治学(アフリカ地域研究)。著書に『貧困、紛争、ジェンダー ―アフリカにとっての比較政治学』(晃洋書房)、『アフリカと政治 紛争と貧困とジェンダー―わたしたちがアフリカを学ぶ理由―[改訂版]』(御茶の水書房)等。


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