平均寿命と平均余命
先週、厚労省から「簡易生命表」が公表されました。毎年7月に前年データが計算され発表されています。「平均寿命」として0歳の「平均余命」が報道されます。この違いは何でしょうか。「平均余命」は字のごとく、「その年齢の人があと平均してどれだけ生存するか」ということ。余った命という文字もどうかと思いつつ(笑)。従って、日本国民全員(0歳で亡くなった赤ちゃんも110歳まで生きた老人も)の亡くなった平均年齢、すなわち平均寿命は0歳の余命を使います。ところが、人間は長生きすればするほど(生存競争に勝つ?)、長生きすることが数字から見られます。表は、各年代(おもに高齢期)の平均余命を拾ってみました。2017年は過去最高の平均寿命ながら、年代別で見ると、実は95歳以降で男女ともに前年より縮んでいます。90歳まで生きる人は増えたけど、その先は長生きがストップ(減少)なのでしょうか。ちなみに、女性は90歳まで生きる確率が50.2%!です。
世界一長生き香港
もう「日本は世界一長生き」ではありません。今回のデータでは、第1位は男女ともに香港。日本は、女性が第2位、男性が第3位。いずれも小数点以下の差なので大差ないのですが、各国の高齢化の勢いはすごいですね。個人的に、この30年近く香港には1~2年に1度は訪れています。この5年位で確かに街の風景が変わってきたことを実感しています。「安老院、護老院」(老人ホーム)や、「長者中心」(高齢者センター)といった施設を本当によく目にするようになりました。とはいえ、香港には介護保険はありませんし、まだまだ「家族介護」が基本の国。寿命が延びて介護の問題も深刻化していると思いますが、支援制度が追い付いていないでしょう。文献によると介護施設も8人や10人の大部屋も多いとか。貧困格差も日本の比ではないので、長生きが幸せとは言えないところが辛いですね。
健康長寿は伸ばせる?
日本も「健康寿命を伸ばせ!」と掛け声が大きくなってきています。データでは、若干伸びているものの、寿命も延びているので「介護期間」が減ったかというと微妙です(苦笑)。高齢者の要介護認定率は17~18%程なので、誰もが要介護になるわけではないですが、年齢とともに確率はぐんと高まります。ところで、香港の要介護率のデータがないので比較できないのですが、街中に介護施設らしきものが増えたとはいえ、高齢者は元気であるという話もよく聞きます。香港は実は坂道がかなりすごいです。この坂を毎日歩くことで体が鍛えられているのではないか、と思ったりもします。ようはバリアフリーではなく「バリアアリー」の街ですね。あと、ともかくたくさん人が外でお喋りしている。自炊より外食の方が多いとも聞きます。外での交流も貢献しているかもしれません。各国の高齢者事情、比較してみると違いがいろいろわかります。
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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。2016年独立。