カナリア朗読劇場~日本国憲法第43条・第15条第2項

憲法朗読第3シリーズの3回目は、第四章 国会から両議院の組織について書かれた第43条と第三章国民の権利及び義務から第15条第2項です。総理大臣のネポティズム(身内びいき)が問題視される中、議員達が「一部の奉仕者」にならない様に条文を確認しておきましょう。朗読はフリーアナウンサーの塩見祐子さん、イラストはかしわぎまきこさん、解説は立命館大学法科大学院教授の倉田玲さん、動画の再生時間は49秒です。引き続き第13条・第81条はこちらから、第14条第1項はこちらからお聞きください。

《第43条・第15条 第2項解説

 日本国憲法の第4章「国会」の最初にある第41条に、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」と定められていますが、ここに明記されている「国権の最高機関」と「唯一の立法機関」の2つの顔しかないわけではないのが「国会」です。すぐ次の第42条に、「国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する」と定められており、さらに次の第43条第1項に、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と定められていますから、これらを逆順に続けて読みますと、「全国民を代表する選挙された議員」からなる「衆議院及び参議院の両議院」からなる「国会」には、その「議員」と「議院」を通じて、要するに「全国民を代表する」という顔もあるということがわかります。
第43条第1項の難解なところは、この「全国民を代表する」という言葉に2つの意味があることです。その1つは、いきなり文字どおり「全国民を代表する」ことが理想的に過ぎて難しくても、たとえば身近なところから少しずつでも「代表する」のでなければならない、という意味です。もう1つは、あくまでも「全国民を代表する」のでなければならないのだから、一部の特定の「国民を代表する」ようなことは許されない、という意味です。お気づきのとおり、このように対照してみると、見事に相反していますので、いかにも難解なところです。

そもそも「代表する」という言葉が必ずしも平易ではないのですが、たとえば株式会社の代表取締役が会社を代表して何か大事なことを取り決めたりすると、それが会社の取り決めたことになるのと同じように、「国会」が「唯一の立法機関」として定めるルールを「全国民」が定めたことにするのでは、その難点を指摘することが自己批判のようになってしまいます。また、前回までの解説に盛り込みました別の条文の言葉も使い回しながら説明しますと、第76条第3項の「裁判官」が第81条の「憲法に適合するかしないかを決定する権限」により「法律」について第98条第1項に定められているとおり「その効力を有しない」と判定するときには、「国会」を通じて「法律」を定めた「全国民」に刃向かって楯突いていることになりかねないでしょう。ほかには、第13条の後段に、「立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする」と定められており、第14条第1項の前段に、「法の下に平等」と定められていることの意味も、すでに解説させてもらいましたが、多数決の仕組みが採用されている民主主義も万能ではないでしょうから、「全国民」が定めた「法律」を誰も批判できないという帰結になってしまうのは、やはり避けるのが賢明でしょう。株式会社の代表取締役が会社を「代表する」ようには「国会」が「全国民を代表する」のではないということですが、ひっくり返しますと、「全国民」が「国会」の「議員」たちを代理人のようにして「法律」を定めているわけではないと説明することもできます。

政治の世界では「全国民を代表する」くらいのつもりで大所高所から広く世間の隅々を見渡して励んでもらいたいところでしょうが、法というルールの世界では、むしろ一部の特定の「国民を代表する」のを禁止しているという意味が大切です。自分の政党や地元の利益ばかりを「代表する」ような「議員」が集まるのでは、「国会」が「国権の最高機関」や「唯一の立法機関」に相応しいとは考えにくいでしょう。第15条第2項に、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と定められていますが、そもそも「国会」の「議員」も「公務員」なのですから、「全国民を代表する」ということは、そのまま「一部の奉仕者ではない」ということでもなければならないでしょう。なお、第43条第2項に、「両議院の議員の定数は、法律でこれを定める」と短く定められていますが、そもそも「法律」を定めるのが「国会」の「両議院の議員」なのですから、現職の「議員」たちが自分たちの再戦にも直接関係するような「法律」を定めるときには、とりわけ「全国民を代表する」という言葉の意味を誤解することのないようにしてもらいたいものです。

※次回は6月14日(水)に第66条を公開予定です。


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