「カナリア俳壇」68

 いったい梅雨はどこへ行ってしまったのかと思うような連日の暑さですが、皆様ご健吟のご様子で何よりです。わたしは早々と夏バテ気味ですが、気合を入れて頑張ります。

△亡き夫の誕生日に孵る燕の子     作好

【評】中七は「たんじょうびにかえる」で9音。大幅字余りです。「燕の子孵る亡夫の誕生日」としておきます。

◎連休の田植機孫も乗っており     作好

【評】楽しい句でたいへんけっこうです。現代仮名遣いで作句なさるならこのままでもちろん問題ありませんが、歴史的仮名遣いなら「乗つてをり」となります。

〇大輪の眩しき友のアマリリス     久美

【評】そのご友人にプレゼントして差し上げたい句ですね(それを挨拶句と言います)。切れを入れるなら「大輪や友の眩しきアマリリス」でしょうか。

〇露天湯の彼方に光る夏の海     久美

【評】露天湯と海の取り合わせは類句が数多くあるため、あまりオリジナリティーはありませんが、気持ちの良い素直な作です。

〇畦道に児が追ひかくる揚羽蝶     千代子

【評】伸び伸びとして気持ちの良い句で、けっこうです。

◎鵜飼舟揺れて袂を濡らしけり     千代子

【評】鵜飼の句で、袂を濡らしたという句は初見です。どこか雅な雰囲気があってたいへん結構です。

〇夕暮の庭に青梅弾み落つ     美春

【評】句としてはきちんとできていますが、日常感覚にとどまっており、いまひとつ詩的領域に届いていない感じがします。「庭」を消したいところです。

〇次々に滑空見せる燕の子     美春

【評】いよいよ燕の子も巣立ちの時期を迎えたのですね。「見せる」を消せるとさらに写生的な作品になるように思います。

△葉をぶらり音符付けたる落し文     白き花

【評】落し文を音符にたとえたのだろうと推測しますが、いまひとつ情景が見えてきません。「葉をぶらり」と「音符」の関係に重複感があるせいでしょうか。もうすこし言葉を整理してください。

△笹百合に呼び止められし川向     白き花

【評】笹百合が作者を川向うから呼び止めたのですか。呼び止めるという擬人法でなく、もっと素直に写生してみてください。

〇郡上への旅の車窓や麦の秋     ゆき

【評】「郡上」という固有名詞が効いていますね。気持ち良い風景が見えてきました。

△~〇枡形の路地は紫陽花水の音     ゆき

【評】路地〈に〉でしょうか。「水の音」ももうすこし丁寧に描写してほしいところです。井戸水の音でしょうか。それとも小流れでしょうか。

〇緑蔭の絵本に日の斑こぼれ来る     妙好

【評】「緑蔭の絵本」は日本語表現として無理があります。「緑蔭や」と切りましょう。

〇水舟に蔬菜浮かぶや吊忍     妙好

【評】「吊忍」が唐突です。別の季語を探してみてください。「蔬菜」も「吊忍」も植物で重複感がありますので、季語は植物以外を選ぶとよいと思います。

〇投函のポストに翳す梅雨の傘     音羽

【評】これから出すはがきや手紙が濡れないように、こんなふうにやりますね。ユニークな視点の句です。「投函すポストに梅雨の傘傾げ」という別案も考えてみました。

△~〇京の路地もるる祭のさらい笛     音羽

【評】すこし言葉のつながりに難を感じます。とりあえず「路地奥に洩るる祭のさらひ笛」としてみました。

△~〇ささゆりや県の境の峠道     万亀子

【評】句の形はきれいにきまっています。「県」が漠然としていてあまり効果的でないように感じました。

〇夏蝶の羽触れあひて飛び行けり     万亀子

【評】繊細な句です。ただ、昆虫(蝶を含め)にとって翅の傷は致命的ですので、本当に触れ合うようなことをするのかどうか疑問なしとしません。

◎惜敗の涙を漱ぐシャワーかな     徒歩

【評】「惜敗」という硬派な言葉によって句が甘さを免れています。心に沁みる句です。

〇地図広ぐ避暑地の橋の親柱     徒歩

【評】しっかりと情景が見えてきます。ただ、避暑地というと勝手知ったる場所というイメージがありますので(別荘地など)、なぜ地図を広げているのか疑問に思いました。

〇肘までの革手袋や薔薇手入れ     織美

【評】「革手袋」は冬の季語ですが、「薔薇手入れ」があるので夏の句だとわかります。肘までの長手袋なのですね。しっかりと写生された実直な句です。

〇合掌に杭組み胡瓜ネット張る     織美

【評】こちらも一所懸命に写生している実直な句です。句意も通りますし、このまま残して結構でしょう。

△緑陰に寝ころがりたり大欅     多喜

【評】この緑陰は大欅の緑陰でしょうか。とすると、離してはいけませんね。たとえば「寝転んで読書欅の緑陰に」など、緑陰と欅をくっつけてください。

△~〇薔薇園の膝当ても付け切り戻し     多喜

【評】状況はだいたいわかりますが、もうすこし言葉の配列を整理しましょう。「肘当てを付け薔薇園の切り戻し」としてみました。

〇~◎いやいやと首振る嬰や花ざくろ     ちづ

【評】日常生活の一コマがうまくスケッチされています。季語の明るさもいい感じです。

〇~◎汗拭ひ夫の水やる畑の苗     ちづ

【評】しっかりとした写生句です。夫へのいたわりの情も伝わってきました。

〇日に映ゆる修道院の青葡萄     茄子

【評】とりあえず形は整っています。「日に映ゆる」が月並調ですので、上五にもっとインパクトがほしいところです。「炎帝や修道院の葡萄園」など。

〇~◎毛虫ゐる毛虫注意の札の裏     茄子

【評】どこかユーモラスで、俳諧味のある句です。上五、「毛虫群る」でも面白いかもしれませんね。

〇~◎山間に音吐朗々田植唄     智代

【評】郷土色たっぷりの句です。このような地域がまだあるのですね。結構です。

〇仄暗き見世棚かざる水うちわ     智代

【評】「仄暗き」に独特の陰影が感じられ、ひなびた地域を連想させます。日本ならではの夏の風景ですね。「かざる」でなく、もっと即物的に「置く」としてもいいかもしれません。「ほの暗き店棚に置く水うちは」。歴史的仮名遣いでは「うちは」となります。

◎しんがりは獅子舞の笛山開き     ひろ

【評】しんがりの獅子舞に焦点を当て、めりはりのある句になりました。活気に満ちた山開きの神事を思い浮かべました。

〇朴の葉の木ごと売らるる父の家     ひろ

【評】最近、ご尊父を亡くされたとのこと。きっと朴の木はお父さんの思い出と深く結びついているのでしょうね。「木ごと」の「ごと」にやるせない思いが凝縮しています。

◎立ち居する両手両足朴の花     永河

【評】家の中で立ったり座ったりして、そのたびに用いる両手足。その手足の動きをどこか他人事のように客観的に眺めているところに俳諧味がありますね。朴の花が匂ってくるのでしょうか。季語のおっとりとした風情も興趣を添えています。

〇~◎箸茶碗手にする日常柿若葉        永河

【評】細見綾子の「ふだん着でふだんの心桃の花」と相通ずる境地の句と受け止めました。さりげない日常が愛おしく思われてきます。「日常」は「暮し」でもいいかもしれません。

次回は7月19日(火)の掲載となります。前日18日の午後6時までにご投句いただけると幸いです。河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。


Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/canaria-club/www/wp-content/themes/mh-magazine-lite/content-single.php on line 21

Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/canaria-club/www/wp-content/themes/mh-magazine-lite/content-single.php on line 30