教員不足を解消する方法はそれではないような…

前々回の記事でも学校教員不足の問題を取り上げました。「担任の先生が決まらない」などの問題が表面化する年度始めであるためか、関連するニュースや研究者による記者会見がいくつもありました。


非正規ではなく正規雇用をすること、教員の数を増やしてひとりあたりの業務が減るようにすることなど、待ったなしで取り組まないといけない状況だと思います。他方で、こんなニュースも出てきました。教員採用試験を前倒すことで、いわゆる「青田買い」をしようという案に意気込みが示されたそうです。


実は文科省の中央教育審議会で、教育実習の制度を大幅変更する案が議論されています。こちらのページの上から2つめの資料に概略があります。


教育実習は教員免許状の取得をめざす学生が、2週間程度にわたって学校で実習をするというものです。どなたも子どもの頃、実習に来ている若い先生の授業を受けたりした経験があると思います。
大学入学時に将来は教師になろうと思っていた学生の中には、当然のことながら「自分は教師に向いていない」と自覚して進路変更をする人たちがいます。学生が進路変更を決断するのは、教育実習の後が多いのです(実習後に「ぜひ教師になろう」と決意しなおす場合も少なくないのですが)。なお上記の資料では、実習後の学生たちの心の動きには特に触れておらず、それよりも「民間企業の就職活動と教育実習が両立できないから、教員免許状取得をやめてしまう学生がいる」ことが注目されています。
つまり、「教員になってくれる大学生が少ないのは、教育実習のせいだ」ということで、教育実習の軽量化や柔軟化のようなことが提案されているように読めます。現在でも学生たちは教育実習以外にも、学校にボランティアに行ったり、体験を伴う学習をしに行ったりしているので、そちらを活用できないかという考えのようです。
しかし本当に、それで大丈夫なのでしょうか?
教育実習は教員養成の最も大事なプロセスだと思います。教育実習の準備段階であきらめたり、実習後に教員にならないと決める学生は、それぞれが自分自身をしっかりと見つめて、「自分は教師に向いていない」と判断したわけです。そういう機会を少なくしたり、無くしたりしてしまって、仮に教員免許状取得者が増えたとして、それは本当に良いことなのでしょうか?
教員不足も心配ですが、教育実習がどうなっていってしまうのかも心配です。
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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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