「カナリア俳壇」60

後ればせながら新年おめでとうございます。今年も皆さんの意欲作に期待しております。

△ぎゅうぎゅうのおでん煮え行き飴色に     美春

【評】飴色になるまで煮てしまっては煮過ぎでしょうか。「行き」は「ゆき」としたほうがよさそうです。また、平仮名表記の場合はすべて大きく書きましょう。「ぎゆうぎゆうの」となります。

〇細る背にひとすぢ光る木葉髪     美春

【評】ご自身に近しい方がモデルでしょうか。あわれみを誘う句です。

〇酒樽の積まるるロビー松の内     音羽

【評】ホテルのロビーでしょうか。粋なお正月飾りですね。「積まるる」という受動態を能動態に変えるだけで、一層どっしりとした感じが出るように思います。「酒樽を積みたるロビー松の内」。

〇箸紙に来られぬ婿の名を書きぬ     音羽

【評】仕事等のせいで来られないことは事前にわかっていたのでしょう。それでも名前を記した箸紙を用意したところにお婿さんへのいたわりの心がこもっていますね。「来られぬといふ婿の名も箸紙に」とするとさらに切れが増す気がします。

〇観劇の上気せし頬雪明り     妙好

【評】外に出たあとも感動さめやらず、という場面なのですね。「観劇に」としたほうが調べがよくなるかもしれません。

◎小一の君のおもかげ年賀状     妙好

【評】もしかすると元担任の先生の立場で詠まれた句でしょうか。それともかつての同級生を思っての作でしょうか。いずれにせよユニークな味わいの句です。

△~〇煤払ふ硝子に映ゆるフィラメント     智代

【評】「フィラメント」という言葉は面白い句になる可能性を感じさせますが、このままですと裸電球のスケッチに過ぎません。もう少し情景が広がるといいですね。

△~〇瞼閉づアヴェ・マリア澄む聖なる夜     智代

【評】「閉づ」「澄む」「なる(なり)」と述語が3つも続くと、どうしてももたついた感じになります。とりあえず「瞼閉ぢ聴けり聖夜のアヴェ・マリア」としてみました。

◎蠟梅の蕾こぼるる父母の墓     マユミ

【評】この蠟梅は供花でしょうか。たしかに蠟梅の蕾は「こぼるる」という形容がぴったりかもしれませんね。

〇~◎芸能の神を詣づる島の春     マユミ

【評】どこの島でしょう。芸能の神様を祀った神社があるのですね。「神に」としたほうが自然かもしれません。

〇~◎白菜にちひさきデデ虫隠れをり     白き花

【評】こういうさりげない発見を詩に高められるのが俳句のよさですね。中七が字余りです。また「デデ虫」は外来語ではないので平仮名表記にしましょう。「白菜にちさきでで虫隠れをり」。

△~〇炬燵沼リモコンさへも遠く有る     白き花

【評】炬燵から抜け出せず、リモコンを取りに出るのさえ億劫だという句意なのですね。面白いけれど、詩的感興は乏しい気がします。

〇来店の一人だけなり帳始     徒歩

【評】「帳始」とは少し古風で、今時なかなか使う機会のない面白い季語ですね。どういう店なのか、句からわかるといいですね。「帳始散髪の客一人のみ」など、もう一工夫できそうに思います。

〇栓堅きソムリエナイフ久女の忌     徒歩

【評】頑固なワインボトルのコルクと久女とを取り合せようとした意欲作ですね。上五を何とかしたいところです。わたしにもなかなかいい案は思い浮かびませんが、「手に痛き」では今一つでしょうか。

△~〇控訴院の冷たき石の大階段     万亀子

【評】句材はユニークですが、上五と下五がともに字余りで、調べがよくありません。とりあえず「控訴院の石の階段冷えゐたり」としておきます。

△重なりてなほ重なりて積む落葉     万亀子

【評】「重なりて」といえば「積む」は要りませんね。別の句になってしまいますが「とりどりの落葉重なる一色に」と考えてみました。

〇搗きたてを嫁と丸むる鏡餅     織美

【評】丸めた結果が鏡餅になるわけですから、「丸むる」という現在形を過去形にし、「搗きたてを嫁と丸めし鏡餅」としましょう。

△足踏みの縄綯う機械冬の父     織美

【評】まず「綯う」は「綯ふ」と表記しましょう。こういう細部に気を配ることが上達への第一歩です。「冬の父」も季語の使い方としてやや強引です。「機械踏み縄綯ふ父や寒土用」としてみましたが、季語は他に工夫できそうですね。

〇寝る前に星見る習い去年今年     恵子

【評】余計な力が加わらず、素直に詠まれた句でけっこうです。ただ、「習ひ」を「習い」と書くような凡ミスは犯さないことが大切です。句会ですと、このような仮名遣いのミスだけで採ってもらえないこともあります。

〇子等の輪へ我も子返りかるた取り     恵子

【評】賑やかな情景が見えてきます。ただ、「子返り」がどうでしょう。高齢者が認知症などを患い、子供っぽい行動をとることをこう呼ぶ場合が多い気がします。

〇大鍋の豚汁たぎる年忘     利佳子

【評】大家族の忘年会風景を想像しました。「大鍋に」でしょうか。

△~〇地下鉄に熊手担いでいかり肩     利佳子

【評】客観的にだれかを見て作った句だと思うのですが、この「いかり肩」の人はだれでしょう。通りすがりの人では感興は薄いように感じました。地下鉄も場所としてどうでしょう。こういう人がいるとちょっと傍迷惑かなと思いました。

△お地蔵の日だまりとなる鏡餅     永河

【評】むずかしい句で、解釈し切れませんでした。地蔵に鏡餅をお供えしたのでしょうか。「日だまりとなる」もどういうことでしょう。

〇~◎天と地の温もり秘むる福寿草       永河

【評】「天と地」で句柄がぐんと大きくなり、めでたさが増しました。「秘むる」がやや観念的でしょうか。「天と地の温もり集め福寿草」「あめつちのぬくもり貰ひ福寿草」などもう少し工夫できそうな気もします。

〇初歩き空に赤い実玉水木     ゆき

【評】「初歩き」という季語はありませんので、これは赤ん坊が生まれて初めて歩く意味に解しました。季語は玉水木の実で秋。秋の句になりますが、初めて歩いた幼子が、空の赤い実を珍しそうに眺めている光景を想像しました。

〇篝火の熱き頬して熊手買ふ     ゆき

【評】臨場感のある句です。ちょっと語順を変え、「篝火に頬熱くして熊手買ふ」としてみました。

〇スプーンに逆さの影や寅彦忌     あみか

【評】寺田寅彦は『吾輩は猫である』のなかの寒月のモデルといわれ、不思議な物理実験に没頭した人のようですから、スプーンに映る逆さの像なども関心対象だったかもしれませんね。

△~〇底冷や節揃えたる犬矢来

【評】京都の料亭前の風景でしょうか。ふつう節は揃えるものだと思いますので、あまり意外性は感じませんでした。「揃へ」としましょう。上級者(同人)はこのような凡ミスを犯してはいけません。

△~〇霜柱孫と踏みしむ父の墓     千代子

【評】俳句では「孫」のことも「子」または「児」と表現することを勧めます。「孫俳句」はどうしても甘くなるので、避けるのがよしとされています。「霜柱児と踏み父の墓参り」。孫はカットして、「父の墓まで霜柱踏みながら」とするとすっきりします。

〇番鳥きて食べ尽す実千両     千代子

【評】オリジナリティーという点ではやや弱いものの、このように素直に作られた句は気持ちよく読むことができます。この調子でがんばってください。

〇二日はや父が胡坐でとろろ汁     久美子

【評】瀬戸市では2日にとろろ汁を食べる習慣があるそうですね。けっこうでしょう。

〇孫と詠む俳句楽しや冬の朝     久美子

【評】素直に詠まれた楽しい句です。このような作り方を心掛ければどんどん上達していくと思います。

次回は2月1日(火)の掲載となります。前日の1月31日(月)午後6時までにご投句いただけると幸いです。河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。


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