大人の学びも大事に

立憲民主党の代表選挙がありましたね。京都に10年住んでいましたので、代表に選ばれた泉さんにも親近感がありますし、女性候補の西村さんにも期待していましたが、本日の話題は北海道のニセコ町の町長も務めておられた逢坂さんです。私自身が人口2万人の日野町(滋賀県)出身であることなどから、リベラル系の政党の「地方目線の弱さ」みたいなものは、日ごろ気になっています。大都市部(つまり議席数の多いところ)で議席を得るケースが多いので、そうなりがちなのはわかるのですが、近年の新自由主義的な政策の中で地方の困難が放置されがちな中、地方、さらに言えば田舎で暮らす人々の生活に、野党からの目配りが増えてほしいという思いもありました。
その逢坂さんのインタビュー動画を見ていて、興味深いエピソードがありました。

ニセコ町の町長になってすぐ、町職員の研修費を(議会の大反対にあいながらも)10倍にしたそうです(もともとが非常に少なかったのだと思いますが)。大学卒業後にご自身も町役場で勤務して、「税金が生かされるのも無駄にされるのも、町職員の力量が大きい」と実感されたからだそうです。私も公立大学という、お役所の延長線上のようなところで勤務していますので、この感覚は非常によくわかります。その結果、町職員の職務能力は大きく向上し、他の自治体の研修に講師として呼ばれることも増え、それが彼女・彼らの自信につながり、さらに意欲的に学び…という好循環を生み出したとのことでした。
折も折、11月上旬に日本経済新聞で、社会人の学び直しに関する記事が2つもありました。



いずれも有料記事なのですが、概略は次のようなところです。
1つめは、総選挙後に岸田内閣が打ち出した経済対策への批判で、その中に「学び直し支援」が諸外国と比べても大変に乏しいという指摘でした。2つめは、労働者の学び直し(成長や新しい技能の習得)のための資金投入が、世界で競争するように行われているというものです(リスキリングはre-skillingで、新しいスキル等を身につけることです)。
グローバル化や情報化が進む中で、学校や大学を卒業して働いている人たちの「学び直し」の重要性はコロナ禍以前にも指摘されていました。また脱炭素や脱原発が求められるということは、産業の構造変化が求められるということでもあり、その中で労働者が置き去りにされてはいけません。子どもたちの学びの保障だけではなく(また子どもたちだけに課題解決を押し付けるのではなく)、大人たち自身が学び、変化する必要があり、政治・行政・企業・社会はそれを支援しないといけないと思います。残念ながら日本は、教育に対する公的支出がOECD加盟国の中でも非常に少ないことが指摘されていて、それは労働者の学び直しでも同様です。
こちらは中央教育審議会に対して、教育への公費増額を要求せよという社説です。

「学び直し」と言っても、職場における研修や社会教育、大学や大学院への入学・再入学まで多様ですが、25歳以上の大学進学率が非常に低い状況の背景に「企業が個人の負担にただ乗りしている」という指摘の記事も見つけました。

大人の学ぶ権利、成長する権利の保障および「大人も学ぶ社会づくり」ということを、改めて考えさせられました。
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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