こころ野便り~農業について思う事 その13

札幌を過ぎると北海道の旅も終盤に入る。中山峠までは、長い長い上り坂が続く。峠のユースホステルに宿泊した。朝目覚めるとザーザー降りの雨になっていた。雨の中を歩くのは嫌だ。疲れも溜まっていたし連泊して少し休もうかと朝食後受付に向かった。もう一泊したい旨ペアレントさんに伝えると、この雨は、雪に変わるから降りなさいと言われた。雨の中、合羽を着て出発した。ペアレントさんが言われた通り、昼前に雪に変わった。路面は、シャーベット状態になって行った。標高が下がって来たので積もる事は無かったし雪も止んだから良かったけれど峠はかなり積もっていることだろう。もう根雪になる季節だ。もう一日遅かったら徒歩での峠越えは、困難だったかもしれない。岩見沢を過ぎてから、この旅が自分だけのもので無くなった気がして何かもやもやしながら歩いていたが、それでも良いのではないかと思えた。それから帰ってからの農業のことを考えながら歩いた。初めは、自然の中で自給自足的な生き方も良いと思っていた。でも祖父や父が守ってきた畑で人や社会と関わりながら自分が理想とする野菜作りをする。そんな未来をおぼろげながら描き始めた。この旅を始める前、父や母に「荒唐無稽な理想論を語り世捨て人になるのか」と言われた時「そうではない」と思いながらも上手く説明できなかったことを必死に描こうとしていた。人と自然の間に立つ農業。それは、当初思っていた心地良いだけのものではない。

京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら


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