入国できない留学生

コロナ禍の影響で、大学授業がオンラインになることが良くあります。他方で感染状況が落ち着いている時期や地域では、対面授業も再開されています。ただ、対面授業が再開されても、オンラインも併用せざるをえません。私自身は講義を、Zoomという会議システムで中継してやっています。100名程度の受講者のうち、10-20名程度がZoomの向こうで授業を聞いています。なぜこのようなことが必要かと言うと、ひとつは感染リスクを恐れて大学に来れない学生がいるからですが、「入国できない留学生」のためというのもあります。
日本への留学が決まっている(というより、すでに日本の大学の学生です)にもかかわらず、Covid-19感染拡大を抑止するために入国が認められないのです。そのような学生たちは、母国でオンラインで授業を受けているのですが、時差のために昼夜逆転生活になったり、話し合ったり相談したりする友達が近くに全くいなかったりする中で、とても苦労をしています。


人生を狂わされた、日本から見捨てられたという声も上がっています。東京五輪の選手たちが入国を許可されるのに、なぜ留学生たちの入国が許可されないのかという訴えもあります。


記事の中では精神的な辛さが強調されているように思います。確かにそれが最も深刻な問題であるようには思うのですが、実際にやっていて思うのですが、Zoomで中継する講義というのは非常に聞きづらいものです。
実は、教室でやる講義と、オンデマンド型(ネット上の動画を聞くタイプ)の授業では、授業の作り方が全く違うのです。講義は90分程度の時間で、起承転結を組み合わせて流れを作ってしゃべりますが、オンデマンドであれば10-15分ずつに講義を区切っていきます。また、Zoom中継で教員の声を届けることはある程度可能なのですが、受講生の声を届けることはほぼ無理です。そのため「このテーマについて、時間をとりますから、近所の席の人と話してみて」というようなことが、Zoom中継授業ではほぼ無理です。それでも日本人学生なら、聞きなれた日本語ですし、場合によっては学校に出てくることも可能です。海外にいる留学生はそうは行きません。
こちらの記事は、このような状況の背景事情も掘り下げてあります。結局のところ、日本で学びたいと思っている留学生を大事にすることについての、優先順位が低いということでしょうか。日本人学生には海外に出て活躍してほしいが、入ってくる人のケアをしないという姿勢が、国際社会で受け入れられるのだろうか…?と思います。


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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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