学長のリーダーシップというけれど…

本日の記事で取り上げようと思っていたことが、ちょうど20日日曜日の朝のNHKでも一部が取り上げられていました。


国公立大学で学長が暴走して、学内外からの批判や懸念の声が上がっているところが全国各地にいくつもあります。日本の国立大学は、2006年までは文部科学省の一部局という位置づけだったのが、「国立大学法人」という形で法人化しました。この時、学長には強い権限が与えられました。法人化直前の頃に私は信州大学にいました。法人化前の研修で、法人化後に経営審議会委員になる見込みの財界の方々の話を聞くというのがありました。エプソンの会長や八十二銀行の元頭取など、全国的にも知名度の高い方々の話を聞いたのですが、非常に印象に残っているのは「国立大学法人の学長というのは、独裁者的な権力をもっている。こんな強い権力を持つポストは、民間企業では聞いたことがない」と、皆さんが口をそろえて仰っていたことです。
それでも当時はまだ、学長の選考には教員による意向投票(いわゆる学長選挙)が行われることも多く、ある程度の歯止めがあったように思います。しかし2014年に学校教育法の改正があり、教授会がもっていた権限が学長に集中するようになりました。意向投票も多くの大学で廃止されました。他方で学長の仕事をチェックする機能は著しく弱いままです。


そして実際に、いくつもの大学で不可解なことや不透明なことが生じています。
意向投票で選出された学長が、根拠が不十分なことで解任されたり…。


学長が病院長にパワハラを行った末に解任、さらには業務実態のない学長補佐に報酬が支払われていたり。


学長の任期を撤廃してしまった大学も。学長に任命される際の根拠となっていた大学のグローバル化への貢献には、留学生数の水増しもあったとのことです。


大学の教育課程を大混乱に陥れるような人事を強行した大学もあります。


学長に権限を集中させたのは、教授会のような集団での意思決定では改革のスピードが上がらないからということのようです。冒頭のNHKのニュースでは、一部の大学では研究資金の獲得などで成果もあげたと言っていました。ただそれは一時的にお金が手に入ったということであり、長期的にみたときにはどうなのだろうかと思います。他方で、学長の専横によって教育や研究の基盤が壊されてしまうと、元に戻すのは非常に困難です。しかも民間企業とは異なり、株主総会や株主代表訴訟のようなものもありませんので、学長はやりたい放題の責任を取る必要がないのです。
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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