「カナリア俳壇」49

早々と梅雨に入り、鬱陶しい日が続いていますが、じめじめした気分を吹き飛ばすような句を作りたいものですね。さっそく皆さんの意欲作をみていきたいと思います。

△万緑やすみからすみまで色深く     蓉子

【評】まず中七が字余りです。また、歳時記で万緑の項を引きますと「木々の緑が深まり云々」とありますので、「色深く」は言わずもがなですね。

△若葉風老いの坂道こけぬように     蓉子

【評】下五が字余りです。「に」を取りましょう。「老いの坂道」が気になります。坂道自体に老いも若きもありませんので。言いたいことはわかりますが。

△~〇豌豆の巻きひげ我を手招きす     ゆい

【評】メルヘンチックで楽しい句。ただ、豌豆は花か実でないと季語になりませんので、「豌豆の花々われに首振れり」などご再考下さい。

△~〇陶猫の寝そべる庭に金魚甕     ゆい

【評】句はきちんと出来ていますが、「猫」と「金魚」の取り合せで、句の狙い(作為)が見え過ぎているのが残念。いっそ「陶狸」のほうがよいと思います。

〇庭先の虞美人草やルビー婚     美春

【評】「庭先の」だと調子が弱いので、「我が庭の」くらいにするとルビー婚がさらに生きてくるように感じます。

△草木の頭垂れたる梅雨入かな     美春

【評】草木も梅雨入にげんなりしている、という感じでしょうか。作句の狙いがわかりすぎるのが惜しい。また、「草木」も漠然としています。

〇しんがりにシンバル来たる新樹光     あみか

【評】もし「楽隊」であれば「楽隊」と入れた方が読者に親切でしょう。あるいは「シンバルを鳴らし来る子や新樹光」とすれば、具体的な景が見えてくるように思います。

◎小満や白磁の甕のうす湿り     あみか

【評】使い方のむずかしい季語ですが、見事にきまっていますね。

〇~◎母の句を繙くゆふべ多佳子の忌     音羽

【評】情感にみちた句です。概ね結構ですが、「ゆふべ」も「多佳子の忌」も「時」を表す語ですので、ほんの少し重複感があります。さらによい季語があるかもしれません。

〇鳴きかはす蛙の声に目覚めけり     音羽

【評】句はしっかりできています。ただ、「目覚めけり」がどうでしょう。真夜中の句だと思いますが、本当に蛙の声で目が覚めたのか。下五に工夫の余地がありそうです。

△あめんぼの輪と雨粒の重なりぬ     マユミ

【評】「あめんぼの輪」がやや言葉足らずですし、雨粒と重なるというのも不自然。雨粒が水面に落ちたときにできた輪に重なったということでは?このへんは無理に写生しようとせず、読者の想像にまかせる作り方をしたほうがよいように思います。

〇伽羅蕗を旨しと息子はや三十路     マユミ

【評】「息子はや三十路」にはいろいろな気持ちが込められているものと察しますが、ともかく息子さんも年齢を重ね、伽羅蕗の味がわかるようになったということですね。

△川岸のブルに負けじと雉の声     智代

【評】「川岸のブル」は余計な背景です。それはばっさりとカットして、雉だけを見つめて作るといいでしょう。

△道過ぎる蜥蜴秒速尋ねたし     智代

【評】「秒速尋ねたし」は不要です。蜥蜴がどんなふうに道を過ぎたのか、そこをもっと具体的に写生しましょう。

△気に入りのペン捜しをり桐の花     多喜

【評】季語から察するに、お気に入りのペンを戸外で落としてしまったのでしょうか。そのこと自体に詩的なときめきがあるのかどうか。なんでも詩になるわけではありません。

〇暁の畦に田植機並びけり     多喜

【評】農家の皆さんの気合が伝わってきます。「並びけり」をさらに具体的に(例えば何台くらいあるのか等)描写できるとさらによい句になります。

◎遠き日の恋閉ぢこむる香水瓶     妙好

【評】「閉じこむる」から察するに思いを遂げられなかったのかもしれませんね。すてきな句です。

◎麦秋や父の書棚の切抜き帳     妙好

【評】古くなり黄ばんでいる切抜き帳を思い浮かべました。季語も的確で、よく写生の効いた作品です。

△~〇寒天の甘味ほのかに夏来る     織美

【評】「寒天干す」が冬の季語ですので、最初に「寒天」をもってくると一瞬、冬の句かなと勘違いしてしまいます。上五に「夏来る」を置いた方がいいかもしれません。また、この「寒天」はみそ汁の具なのか、デザートなのか、そのへんもわかるといいですね。

〇母の日の母に供ふる掛けうどん     織美

【評】生前のお母さまが掛けうどんを好まれていたのですね。すなおに詠まれた句でけっこうです。

△蒲公英や和か洋種かと頭寄せ     ゆき

【評】西洋タンポポと日本タンポポの違いについては以下のURLをご覧下さい。

俳人としてはその違いが分かったうえで、蒲公英の句に再挑戦してほしいと思います。

△姉のことマダムジュジュ塗り初夏の朝     ゆき

【評】俳句ではタブーとされる三段切れですね。また句材が多すぎますので、お姉さんのことは省略し、「初夏や顔にたつぷりマダムジュジュ」くらいでいかがでしょう。

△~〇春日傘陶器祭の店覗く     美千代

【評】漢字が6つ続くと見目がよくありません。わたしは漢字を続けるなら4つまでと決めています。また、「春日傘」も「陶器」も物ですので、季語は時候などにしたほうが変化があっていいかもしれません。たとえば「麗かや陶器祭の店覗く」など。

〇新聞に竹の子包み友来る     美千代

【評】採ったばかりのタケノコをもってきてくれたのですね。とりあえず、こんなふうにすなおに写生することが大事です。

△入梅や舞台峠の杉木立     久美

【評】上五はどんな季語でも入りそうですが、「舞台峠の杉木立」が本当に活きて来る季語がもっとほかにあるような気がします。その季語探しこそが作句の面白さでもあり苦しみでもあります。

△初夏や夫とドライブ下呂の湯屋     久美

【評】いわゆる三段切れで、俳句ではタブーとされます。「初夏や夫と下呂までドライブに」など、もう一工夫して下さい。

△~〇梅雨寒や門の小皿に猫の餌     徒歩

【評】「門の小皿」が少々気にはなるものの、とりあえず写生はきちんとできています。ただ解釈に悩みました。飼い猫ではなく野良猫に餌をあげたという意味でしょうか。

△~〇靴下は自分で選ぶ更衣     徒歩

【評】面白いといえば面白いのですが、「靴下」と「更衣」ではつきすぎで、もっと飛躍がほしいところです。「純白の靴下選ぶ立夏かな」など。

△大輪の薔薇一輪に狭き部屋     万亀子

【評】「狭き部屋」という表現はマイナス思考。せっかく大輪の薔薇を生けたのですから、もっと明るく前向きな気持ちで作りましょう。「大輪の薔薇に明るむ四畳半」など。

〇クローバーの指輪をママへ一人つ子     万亀子

【評】大体よいのですが、「一人つ子」にどれほどの意味があるのか、ちょっと疑問に感じました。下五を「男の子」としてはいかがでしょう。

△昼寝後に遠吠え聞くや目覚めなり     ちづる

【評】「昼寝後」と「目覚めなり」は重複しています。「サイレンのやうな遠吠え昼寝覚」くらいでどうでしょう。

△岩場の亀甲羅干しをする春の昼           ちづる

【評】まず5・7・5にする。これが俳句の基本です。このままでは6・8・5です。「春昼や岩場で亀の甲羅干し」など。

〇梅雨晴れの葉の艶やかさ足まかせ     ゆみ

【評】気持ちよさが伝わってきます。「葉」は草の葉のことでしょうか。「梅雨晴の草艶やかに足まかせ」。送り仮名は省略したほうが引締まります。

△~〇芍薬の五月雨うけて傾ける     ゆみ

【評】「芍薬」も「五月雨」も夏の季語。どちらか一つにしたいところですね。「雨受けて芍薬首を振りどほし」など。

〇~◎普段着は少し派手目に藤の花     永河

【評】句の内容と季語「藤の花」がうまくマッチしていますね。「普段着〈も〉」とすれば完璧です。

〇新茶汲む目鼻がまろくなつてゆく        永河

【評】お茶の美味さに表情がやさしくなっていったのだと解しました。上五は切らずに続けた方が「まろくなつてゆく」感じが出るように思います。一案ですが、「振舞ひの新茶に目鼻まろくなる」としてみました。

△十薬の絨毯に乗り小休止     白き花

【評】小鳥が乗っているのでしょうか。十薬というと草丈が20センチ以上ありそうですので、絨毯という比喩には無理を感じます。「十薬の真つ只中に小休止」。ただしかなり臭いかとも…。

△~〇雨の音茶を焙烙で炒る夕べ     白き花

【評】「焙炉(ほいろ)」は「製茶」の傍題で、季語となりますが、「焙烙」は季語とはならないようです。とりあえず「五月雨や茶を焙烙で炒る夕べ」としておきます。

次回は6月15日(火)の掲載となります。前日14日の午後6時までにご投句いただけると幸甚です。河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。

 


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