Weekend Review~「最果てアーケード」

小川洋子って、ちょっと苦手。読んでいて不協和音のような居心地の悪さを感じてしまいます。そこがすんなり入って来る直木賞作家とは違う芥川賞作家の文学性の高さなんだろうなとは思うけれど。「博士の愛した数式」も博士の記憶が80分しか持たない設定とか、感動ものと言われるけれど、どこか奇妙な感じがずっと消えませんでした。そんな中で「最果てアーケード」は初めて好きだなと思える作品でした。
暗く狭い通路の「世界の窪み」のようにひっそりしたアーケード。それぞれの店では義眼、ドアノブ、レース、勲章などがそれを必要とする人のためにじっと待ち続けています。ほら、義眼とか、やっぱり奇妙です。遺髪でレースを編む女性、レモネードの入った魔法瓶が置かれた読書休憩室で百科事典の「あ」から順に読んでいく少女、元体操のオリンピック選手と偽る結婚詐欺の女性など、登場人物たちもかなり不思議です。映画館からの出火が原因の火事で亡くなったアーケードのオーナーの娘が子供の頃からの記憶を語る形で物語が綴られていくのですが、読んでいると、物語とは関係のない自分自身の記憶が蘇ってきて、何故か急に切なくなったり。「かえげえのない思い出と響きあう、ひっそりと美しいものを、だれでも記憶の奥に持っているのだろう。たとえささやかなものであっても、確かにその時間を生きたのだという記憶が、心の中に色とりどりの光の溜まりを作り出す」と解説で蜂飼耳は書いています。小説にちりばめられた不思議な不協和音が読む人の記憶を刺激して、光の溜まりを蘇らせる力を持つのだとしたら、やっぱり小川洋子は文学性の高い作家だなと改めて思うのでした。(モモ母)


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