キャッシュレス決済はわからない人がいる (1)

「お釣りなんでくれへんの?!」
先日、スーパーで買い物をしていたら、レジから声が聞こえた。高齢の女性が、レジ係の女性に詰め寄っている。
「お客様が2万円チャージするって言われたから、チャージして、その〇〇マネーからお支払いいただいて、残高は、ここに記載されています。」とレジ係の人は説明する。
「は?チャージ?チャージってなに?お釣りくれへんの?」と高齢の女性は納得がいかない。レジは混んでいて人がどこも並んでいる。後ろに並んでいる人に気を使ったのか、高齢の女性は、そこで引き下がって、私が袋詰めをしている台のほうに来た。「チャージってなんや?今の若い人の言うことはわからへん…。」と女性は私に言うでもなく、大きな声の独り言のように言った。さらに続けて、お店のポイントカードを見ながら「お釣りここに入ってます、ってそんなんホンマに入ってるかわからへんやんか…」と。
私は、「レシートに書いてありますよ。」と言って、一緒にレシートを確認した。「ほら、ここに。残高がこれだけ残っているから、次のお買い物は、このカードをだして、〇〇マネーでお願いします。」って言ったほうがいいですよ。じゃないと、この中のお金が使えないからもったいないですよ。」と説明した。「そうなん?ほんまや。書いてる。」そういったあと、「チャージってなんや。私、そんなんしたことないのに…。お釣りくれたらええのに。」と言われた。私は、一緒にサービスカウンターに行って、この女性にちゃんと説明してくださいと伝えようかと一瞬悩んだけど、女性が袋詰めを始められたので、「次は、〇〇マネーで支払いますって言ってくださいね。そのほうがこのカードの中のお金が使えるから。」言って立ち去った。
あの女性は、次に〇〇マネーを使えるのかな。たぶん、あの女性は、レジで3,000円程度の買い物に、2万円を出したようだ。1万円で足りるところを、2万円出したから、レジの女性は「チャージするのかな?」と思って、「チャージされますか?」と確認したのだろう。女性は意味が分からなかったけど、「はいはい」って答えたのだろう。レジではよくある。「袋いりますか?」「〇〇カードお持ちですか?」「キャンペーンのシールお集めですか?」いろいろ聞かれる。耳が遠いとわからなくて、適当に相槌を打つこともあるだろう。
 帰り道、私は「キャッシュレスでポイント還元」って、ああいう人には不利やん、と思った。あの女性が認知症かどうかはわからない。でも、3,000円程度の買い物に2万円を出したあたりは、やはり、そうなのかもしれない。
私は今、知的障害の人にわかりやすくキャッシュレスの仕組みを説明する取り組みを福祉関係者と一緒に取り組んでいる。劇にしようか、動画にしようか、など、どうやったらわかりやすく伝えて、被害にあわずにすむか、自分たちの大切なお金を自分のために楽しく使えるか、一緒に考える学びの機会を作りたい。(続)


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About 坂本彩 41 Articles
坂本彩(彩社会福祉士事務所) 大学卒業後、20年間、知的障害のある人とかかわる仕事をする。2017年に、独立型社会福祉士事務所を開業。福祉施設のアドバイザーや研修講師、成年後見人の受任、大学の非常勤講師などをしている。障害のある人もない人も一緒に「学び合いの空間づくり」をしていきたい。社会福祉士、介護福祉士、障害者相談支援専門員、そのほか、漢方養生士指導士、漢方スタイリスト、薬膳アドバイザーの資格も持つ。