資料館等での戦争展示:戦争に反対する声を消さない

各地の博物館等での戦争をめぐる展示に関連して、気になる動きが目立つように思います。戦争の残虐さや加害性(日本が行った加害)を隠す動きです。
北九州市が建設準備中の「平和資料館(仮称)」について、新日鉄住金(現日本製鉄)が北九州市に対して「展示に戦争の内容が多い」という懸念を伝えたという報道がありました。仮称とは言え「平和資料館」なのですから、戦争に関する内容が多いのは当然ではないでしょうか。


大阪では、「ピース大阪」にあった日本による戦争加害展示が2015年に撤去されましたが、その経緯を記した文書の情報公開請求に応じなかった大阪府と大阪市が、裁判で敗訴確定となりました。


但しこれはあくまで情報公開請求に関する裁判であり、政治の不当な介入は明らかにはなりましたが、ピース大阪における戦争加害展示が復活したわけではありません。
博物館等での戦争加害の展示については、これまでにも紆余曲折があったようです。広島女学院大学教授を務めておられた宇吹暁(うぶきさとる)さんが、「ヒロシマ遺文」というサイトを運営しておられます。そこに広島と長崎の原爆資料館での加害展示をめぐる年表が載っています。


「加害展示もしてほしい」という要請と広島・長崎両市の対応の経緯が見て取れますし、自民党の政治家から「加害展示を撤去せよ」という要請が度々あったこともわかります。

戦争の展示とは異なりますが、2014年には「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」と詠んだ女性の俳句が「秀作」に選ばれたにもかかわらず「公民館だより」に掲載が拒否されるということがありました。このことを不当と訴えた女性は裁判で勝訴しました。


勝訴したことは良かったと思いますが、裁判をするのはものすごいエネルギーを必要とすることです。「勝訴で良かったね」で終わるのではなく、戦争に反対して平和を求める声を上げにくい空気が作られてしまわないように警戒することが大事ではないかと思います。
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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