「カナリア俳壇」9

今回は1月9日から29日までのご投句です。
早速、順に見てゆきます。

△今朝の声めでたく聞ゆ初鴉     万亀子

【評】新年を迎えると鴉の声まで目出度く聞こえます。そこで、その目出度さを愛で、「初鴉」という季語ができました。この句は季語をもう一度説明しただけです。「めでたく聞ゆ」と観念的なことは述べず、どんなところが「めでたく」感じられたのか、具体的に描写して初めて俳句という詩になります。たとえば「今朝の声一際高し初鴉」とでもすれば、平凡ですが、いちおう具体描写していますので、俳句にはなります。

△~〇あかがねに輝く鴉初茜     万亀子

【評】「初茜」とは、初日の出る直前の茜色の空。つまり、まだ太陽は出ていませんので、カラスが「輝く」という描写は強すぎませんでしょうか。それと、この句の仕立て方ですと、「鴉」に焦点が当てられ、「初茜」は添え物になってしまいます。「初茜」に焦点を合わせたほうが、どっしりとした新春の句になるように思いました。
添削例として「あかがねに鴉染めたり初茜」。

△冬ぬくし爺に手品を習ひたり     マユミ

【評】「ぬくし」は述語(形容詞)の終止形。「たり」も述語(助動詞)の終止形。このように述語の終止形が二つあると調べが重くなります。一方は名詞で切りたいところです。また、手品を習うということは抽象的で、情景がぱっと浮かびません。俳句は具象性の詩ですから、できるだけ具体的に描写することが大切です。例として「爺が切る手品のカード冬ぬくし」あるいは「爺の手に手品の造花冬ぬくし」など。

〇乾杯はミカンの酒よ女正月     マユミ

【評】類例のない面白い句です。季語も情景とよくマッチしていると思います。「ミカン」は漢字か平仮名のほうがよいでしょう。

〇着ぶくれて路面電車に浅く掛く     音羽

【評】面白い眼目です。たしかにタウンジャケットなど厚手のものを着ていると、腰かけ方も浅めになりますね。表現の上で少し気になるのは、「電車に掛ける」とはふつう言わないことです。「電車の椅子に掛ける」ときちんと言わないと舌足らずになります。「路面」はこの際省略しましょう。「着ぶくれて電車の椅子に浅く掛く」または「着ぶくれて電車の椅子に浅く坐す」でどうでしょう。

△~〇やはらかき熊野筆買ふ旅始め    音羽

【評】熊野筆についてネットで調べたところ、日本国内で売られている筆の約8割が熊野筆とか。別に熊野で買わなくても、大概の筆は熊野筆なのですね。とすると、「旅始め」があまり効いていないような気がします。「やはらかき熊野筆買ふ二日かな」のような仕立て方もありかなと思いました。

〇~◎冬菫靴紐結ぶその先に     妙好

【評】作者の所作もありありと見えてきますし、冬菫の可憐さも伝わってきます。結構な句だと思います。

△酒蔵の音を絶ちたる軒氷柱     妙好

【評】ちょっと句意がつかめませんでした。まず、酒蔵というのはいつも何かの音を立てているのでしょうか。そして、どうして軒氷柱のせいで音が絶たれたのでしょう。

〇錠差して落葉重ぬる御陵かな 徒歩

【評】いちおう出来ている句だとは思いますが、「御陵かな」でまとめるより、落葉に焦点を当てたほうが、一句のかそけさが強調され、味わいも増すように感じます。たとえば「錠差せる御陵に落葉重なれり」「錠差せる御陵に落葉積もりをり」など。

△~〇赤味噌が屋台に滾る寒暮かな 徒歩

【評】赤味噌が滾るというより、赤味噌を溶かした汁がぐつぐつと煮たぎっているのですね。これは名古屋名物の屋台料理なのでしょうか。あと、「寒暮かな」と大景でしめくくるより、滾っている鍋に焦点を当てた方が生活感がぐっと増すように思います。別の句になりますが、この屋台をラーメン屋にして、麺を放り込む前の湯をイメージし、「寒き夜の屋台の鍋に白湯滾る」と作ってみました。

△~〇ひとり訪ふ畳冷たき木賃宿     鳥ちゃん

【評】作者の自解によれば、かつて山頭火が宿泊した織屋という木賃宿の由。ネットで調べてみると、けっこう人気のある観光施設だったようですが、熊本地震のせいで倒壊の危機にあるようです。しかし、そのような説明がないと、知人のいる木賃宿(安宿)を訪ねてきたかのように読めてしまいますので、「織屋旅館」とでも前書きを付けておくとよいでしょう。上五、「ひとり坐す」のほうが「畳冷たき」が生きるように思います。

〇~◎幾重にも空へ楕円を冬の鳶     鳥ちゃん

【評】荒涼とした景が見えてきます。なかなかよい句だと思います。「空へ」ではなく、「空に」でしょうね。

次回は3週間後の2月19日(火)に掲載の予定です。皆さんの力作をお待ちしています。(河原地英武)

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスはefude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。