映画「夜明け前ー呉秀三と無名の精神障害者の100年」

今井友樹監督による映画「夜明け前」が関西でも上映されます。京都では11月10日(土曜)から、京都シネマで公開です。

この映画の主人公にあたる呉秀三は、今から100年前に日本における精神障がい者の実態調査を行った人物です。「日本精神衛生会」の前身の「精神病者慈善救治会」を発足させた人物でもあります。


当時の日本では、精神の病にかかった人々はいわゆる「座敷牢」に監禁されていました(私宅監禁といいます)。それは、身体拘束なども伴うとても悲惨な状況で、その状況ついて呉が述べた「わが邦十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸のほかに、この邦に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」という言葉は有名です。
「この病を受けたる不幸」という表現は、現代からみると「勝手に不幸と決めるな」と言われるかもしれませんが、100年前ということで歴史的の制約と理解できるかと思います。他方で、「この邦に生まれたる不幸」と日本の制度を真っ向から批判し、政策の改善を訴えたのはすごいことと言えるでしょう。なお当時の私宅監禁は、警察が指示を出して行われ、医療よりも監禁に重きが置かれていました。
呉が調査をしたのは100年前とはいえ、その際に呉が明るみに出した様々な問題は、現在にも引き継がれているところがあると思います。

呉秀三の生涯については、日本精神神経学会のサイトのこちらのページにまとまっています。


また、同学会のサイトでは、当時の座敷牢や拘束道具の写真の一部を見ることができます。

また、呉が行った私宅監禁の実態調査の報告書「精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察」を2012年に現代語訳した方が、調査時のこぼれ話を紹介しておられます。

なお、この映画が6月に東京で公開された際には、新聞各紙でも紹介されました。


ご関心を持たれた方は、ぜひとも映画館に足を運んでみてください。
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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