かわらじ先生の国際講座~日本外交のジレンマ

平壌で南北首脳会談が行われていますね。

はい。韓国の文在寅大統領のイニシアチブで、朝鮮半島の非核化と米朝関係改善への動きが再び活発化しようとしています。金正恩委員長も文大統領の労に感謝の言葉を述べたそうです。他方、日本の影は本当に薄いと言わざるを得ません。朝鮮半島の非核化は、韓国以上に日本にとって切実な課題なのですが。日本は第一に拉致問題を掲げますから、北朝鮮は日本を相手にしません。金正恩から感謝の言葉を引き出せることを行わない限り、拉致問題も進展しないのではないかと危ぶみます。

ウラジオストクの東方経済フォーラムでも日本はめざましい成果をあげられませんでした。

中国に主役の座をとられてしまいました。おまけにプーチン大統領は「前提条件なしに、平和条約を結ぼう」と公開の場で提案する始末。これは北方領土問題を棚上げしようとの意思表示にほかなりません。日本がロシアとの間で積み重ねてきた前提条件が一気にひっくり返されてしまいました。日本がいかにロシアに軽く扱われているかをまざまざと示す出来事でした。

日本の頼みの綱はアメリカだけというわけですか? 

そこにも問題があります。日本はアメリカの対日貿易赤字の埋め合わせとして、4664億円もするイージス・アショア2基をアメリカから購入することになりましたが、これがロシアの反発を招いています。ロシアの安全を脅かすというわけです。また、アメリカとの約束を履行するために、辺野古沖の埋立てによる米軍基地新設を進めていますが、これが沖縄の世論の反発を招いています。さらに、つい先日、アメリカへの忠誠を示すかのように、南シナ海で海上自衛隊の軍事演習を行い、中国の批判を浴びました。しかし、日本がこんなに犠牲を払っているのに、トランプ大統領は日本に感謝などしていません。今月23日に安倍首相は訪米し、トランプ大統領と首脳会談を行いますが、もし日本が貿易問題でアメリカを満足させなければ、アメリカは日本に相当厳しい措置をとるだろうと言われています。

これでは日本は四面楚歌になりかねませんね。

自民党の総裁選では改憲問題も争点になっていますが、そんなことを議論している場合ではないと思います。対米追従で防衛予算を増やし、軍事協力を推し進めても日本が孤立するだけです。日本発の平和理念を打ち出すことはできないものか。それができる人物に国家のトップに立ってほしいと望みます。

9月22日(土)朝日放送の「おはよう朝日」に河原地英武が出演し、時事解説を致します。時間は午前7時前後の予定です。是非ご覧ください!!

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河原地英武<京都産業大学外国語学部教授>
東京外国語大学ロシア語学科卒。同大学院修士課程修了。専門分野はロシア政治、安全保障問題、国際関係論。俳人協会会員でもあり、東海学園大学では俳句創作を担当。俳句誌「伊吹嶺」主宰。


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