かわらじ先生の国際講座~安倍首相のウラジオストク訪問

安倍首相は9月10日~13日の日程で、ロシア極東の都市ウラジオストクに出かけていますね。目的は何ですか?

同市で開催される「東方経済フォーラム」に出席するためです。これはロシアが自国極東部の経済発展を目指し、外国の投資を呼び込むためのもので、今年で4回目の開催となります。約60ヵ国、5000人以上(その大部分がビジネスマン)が参加する大規模な会議で、プーチン大統領は無論ですが、安倍首相も毎年参加しています。

なるほど。しかし日本は災害続きで、その復旧もままならない大変な時期なのに、4日間も国を留守にするとは、たいへんな意気込みですね。

はい。ロシアに対する力の入れ方がよく分かります。すなわち安倍首相は、ロシア極東の開発に大規模な支援を行い、ロシアをアジア太平洋経済圏に仲間入りさせることと引き換えに、北方領土問題で譲歩を引き出そうという戦略を練ってきました。プーチンとしても日本の経済支援は魅力的でしたし、日本を味方につければ、経済制裁解除の突破口が開けるとの打算があったと思われます。ですから今までは、ロシアは領土問題でも妥協の余地があるかのようなそぶりを見せてきました。しかし今回、安倍首相の目論見が幻想であったことが明らかになったと思います。

と言いますと?

東方経済フォーラムに先立ち、昨日(10日)、日露首脳会談が行われましたが、合意された経済協力分野といえば、ウニの養殖やイチゴの温室栽培など、およそ首相が出かけて決めなくてはいけないような内容とは程遠いものでした。そして領土問題に関する前進は1ミリもありませんでした。それどころか、ロシアは日本に冷や水を浴びせるような行動に出ています。なんとロシア政府は、9月11日~15日、極東で冷戦後最大規模の軍事演習をすると発表したのです。それには中国軍も参加するそうです。これは日米を仮想敵としたものと受け取らざるを得ません。

なぜロシアは日本に対し、こんなに冷淡になったのですか?

第一に、日本を味方につけても何の利益にもならないと見切ったのでしょう。安倍首相はトランプ大統領に追従するだけで、経済制裁の解除すら説得できない。朝鮮半島情勢の変化を促したのは韓国、アメリカ、中国であって、日本の影響力は皆無と言ってよかった。ロシアにとって日本政府は重んじるに足らない存在になっているのでしょう。第二に、中国の存在です。今回、中国の習近平国家主席が初めて東方経済フォーラムに参加すべくウラジオストクに赴くことになりました。中国が本格的な参入を決めれば、日本の影はどうしても薄くなります。プーチン大統領はロシア極東の第一のパートナーとして、安倍首相の日本ではなく、習近平の中国を選んだのです。安倍首相は東方経済フォーラムで演説を行い、明るいビジョンを語るでしょう。そして帰国後は、その成果を大いにアピールするはずです。しかしその中身はたいそう薄っぺらなものになりそうな予感がしています。

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河原地英武<京都産業大学外国語学部教授>
東京外国語大学ロシア語学科卒。同大学院修士課程修了。専門分野はロシア政治、安全保障問題、国際関係論。俳人協会会員でもあり、東海学園大学では俳句創作を担当。俳句誌「伊吹嶺」主宰。


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