国民の暮らしが貧しい中東やアフリカの諸国でいつまでも戦争が終わらないのはなぜでしょう?
その原因は複雑ですが、戦争を終わらせる方法ならば、理論上は単純です。
といいますと?
武器が尽きれば、おのずと戦争は終わります。逆に、敵と味方に武器が供給される限り、延々と戦いは続きます。
その武器はどこから来るのですか?
2017年の「世界の武器輸出額 国別ランキング」をご覧ください。(サイトはこちら)
トップ10の内、1位アメリカ、2位ロシア、3位フランス、6位イギリス、8位中国。この5ヵ国は国連安保理常任理事国です。世界平和に対して最も大きな責任をもつ国々が、一方で紛争の停止を呼びかけ、平和を唱えながら、他方でせっせと武器を売っているのです。武器購入国の大半は、貧しい途上国。しかもその約半数が中東諸国といわれます。ちなみにアメリカだけで世界の武器輸出額の約4割、米露2ヵ国で6割、常任理事国5ヵ国で4分の3を占めるのです。つまり本当に世界平和を望むなら、これらの国々が武器輸出を自制すればよいのですね。
そうですが、実際にはその逆のことが行われています。今年4月、アメリカのトランプ大統領は通常兵器の輸出促進策を打ち出しました。ロシアのプーチン大統領も武器輸出が国家の重要な戦略だと表明しています。中国の習近平国家主席もまた然りです。
その理由はやはり経済目的でしょうか?
はい。武器の輸出は巨大な利益をもたらします。武器は1つ1つの単価が莫大な商品です。その商品は消費してもらわないと次の販売につながりません。すなわち武器を売って儲けるためには戦争が必要だということになります。資本主義はあらゆる物を商品に変え、利潤追求の手段とします。そこに倫理はありません。この経済の暴走に歯止めをかけるのが、政治の役目です。つまり国家が理性を発揮しなければならないのですが、いまや国家がなりふり構わず利潤追求に突っ走っているのです。
日本はどうなのですか?
さきほどの「武器輸出額 国別ランキング」に日本は顔を出していません。これは誇ってよいことです。日本は戦後、平和国家としていくつかの理念を打ち立ててきました。その1つは平和憲法、2つ目は非核三原則、そして3つ目は武器輸出三原則です。この武器輸出三原則とは、実質上、いかなる国にも武器を輸出しないという政府の方針であり、日本の国是でした。
過去形で言うのはなぜですか?
2014年4月、我が国政府は武器輸出三原則を撤廃し、「防衛装備移転三原則」と呼ばれるものに切り替えました。これは事実上、武器輸出を解禁する政策です。それを正当化する理屈はいろいろありますが、日本が経済的利益のために平和理念を放棄しようとしていることは否めません。一国の理念がこんなふうにあっさり切り崩されてよいはずはありません。もうじき、戦後日本の出発点となった8月15日がやってきますが、これを機に、改めて日本の国家ビジョンを我々自らが考えてみませんか。
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